2004924

■バイオハザード予防市民センター声明

生命の尊重と予防原則の立場から、

BSE検査の緩和に反対し全頭検査の継続を求める

〜食品安全委員会「中間とりまとめ」(2004年9月)について〜

 

バイオハザード予防市民センター

 (代表幹事 本庄重男 新井秀雄)

 

1. 厚生労働省と農林水産省は、BSE(牛海綿状脳症)対策について内閣府の食品安全委員会プリオン専門調査会(吉川泰弘座長)の「生後20ヶ月以下の感染牛を現在の検査法で発見することは困難」(「中間とりまとめ」)との報告を受け、生後20ヶ月以下の牛を検査対象から外す方向で緩和し、米国産牛の輸入再開に道を開く意向と伝えられる。

 

 私たちは、全頭検査の見直しの動きに対し、

@生命の尊重と予防原則を最優先する立場からBSE検査の緩和に反対し全頭検査の継続を求めること

A今回の全頭検査の見直しにつながる拙速な結論には何ら科学的根拠はなく、大統領選を前にした米国ブッシュ政権の政策的要請に従う日本政府の政治的姿勢が反映された結果であり許容することはできないものであること

を表明するものである。

 

その上で、日本政府、関係各省に対し以下の施策を求めるものである。

@)未解明部分の調査研究による科学的な解明を推進すること

A)「生命の権利」「食の安全・安心」の確保を原則とし、政治経済的判断を優先しな

いこと

B)米国に対し、安全性に関する立証責任及び説明責任を求めること

 

2.以下に「中間とりまとめ」について当センターの見解を述べる。

 

(1)「中間とりまとめ」は、検出限界を20ヶ月齢とする科学的根拠を示してはおらず、米国産牛のリスク評価も行ってはいない

 

 「中間とりまとめ」は「結論」として、「我が国における約350万頭に及ぶ検査により20ヶ月齢以下のBSE感染牛を確認できなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分に考慮に入れる事実である」とする一方で、現状のBSE検査法の限界と改良の必要性、的確な特定危険部位除去と交差汚染防止、飼料規制の実効性の保障とトレーサビリティ(生産履歴)の確保及び検証などの必要性を指摘している。しかし、20ヶ月齢で検出限界の線引きをする根拠は、単に現在実施されている検査方法によっては20ヶ月齢以下の感染牛が検出できていないというだけで、あいまいである。

逆に、「結論」の中で、「潜伏期間のどの時期から発見することが可能となり、それが何カ月齢に相当するのか、現在のところ断片的な事実しか得られていない」「20カ月齢以下の牛に由来するリスクの定量的な評価について、今後さらに検討を進める必要がある」としていることから、現段階では検出限界の月齢を確定する知見が不十分であり、検出限界以下のリスクも不明である、と解するのが自然と思われる。私たちはそこから自ずと、全頭検査の継続という結論が導かれると考える。

また、米国産牛のリスク評価、米国内の危険部位の除去の妥当性、生産履歴の実態などの検証作業などは行なわれてはいない。

 

(2)「リスク評価」を行う前に、多数の未解明事項の科学的な解明が先決である

 

@ BSEについては以下のような多数の未解明点がある。「中間とりまとめ」でも現状は基礎的研究が諸外国及び日本で進められている段階としている。

BSEプリオン感染経路とBSE発症要因

・感染時期及び体内でのBSEプリオン遺伝子発現部位及びプリオンタンパク蓄積部位

BSEプリオン蓄積量と発症との関係

・いわゆる危険部位以外の安全性(BSEプリオンの存否)

・検出限界以下の牛の安全性

・人のvCJD(変異型クロイツェルト・ヤコブ病)での異常プリオン感染量及び発症との関係

・人でBSEプリオンが蓄積して、vCJDが発症するまでのメカニズム及び潜伏期間

・輸血などを介して人から人へのvCJDプリオンの伝達の危険性(人獣共通感染症として)

・解体時及び危険部位除去時の作業の安全性と検証

・トレーサビリティ(生産履歴)の確保と検証(とりわけ米国産牛)

 

A 一方、リスク評価の危険な側面として以下の点が指摘される。(注)

@)未知なものや計測不可能なものに対する非科学的あるいは主観的な仮定に基づくリスク評価が、何ら科学的根拠のない結論を導き出すものであること。

A)「許容できるリスク」を設定することは、リスクを生み出す構造から目をそむけさせ、リスクの存続を許すことになること。

B)被害の影響を受ける人にとっては、生命の尊厳が侵されることになり、それを社会が黙認することになること。

C)被害に対する財政的負担を、リスクを生み出した加害者ではなく、社会が負うことになること。

 「中間とりまとめ」のリスク評価のあり方に、こうした危険な側面を指摘せざるを得ない。

 

B BSEは科学的に解明されていない部分の多い疾病であるとともに、食物連鎖、生態系という複雑で未解明な分野との関わりが深いものがある。前項AB)については、日本国憲法に定める個人の生命の権利(第11条・12条)に反することになり検討を要するものである。

リスク評価を行うにはまず前提条件の整備が必要であり、より高度な検査法の開発も含め、科学的な未解明部分の解明こそ先決である。

 

(3)生命の尊重と予防原則を基本とすること

 

 多数の公害経験から、「予防は治療と補償にまさる」「事後対策よりは未然防止を」を原則とすべきである。1992年の環境と開発に関するリオ宣言を契機として、深刻なあるいは非可逆的な被害が生じる疑いのある場合、科学的に不確実な部分があろうとも、その被害を回避する対策を優先してとるべきだとする予防原則が各国で取り入れられつつある。(注)

当然、BSE対策においてもこの予防原則が適用されるべきである。

 生命の尊重=国民の健康保護を最重要とする立場から、この予防原則の上に立ったリスク評価とBSE対策が求められる。                       

以上 

 

(注)参考文献「予防原則を行動にうつすためのハンドブック第1版」Joel TicknerCarolyn RaffenspergerNancy Myers 訳 グリーンピース・ジャパン)

 



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