武蔵村山市にある感染研BSL4施設の稼働策動に抗議する

 

2015816

バイオハザード予防市民センター
代表幹事 新井秀雄・臼田篤伸

国立感染症研究所の安全性を考える会
会長 鈴木武仁

 

 201583日に塩崎厚労大臣が藤野武蔵村山市長との間で同市にある国立感染症研究所のBSL4施設を稼働させることに合意したことに対して、以下の理由により抗議する。

 

 いのちが第一か、それともBSL4施設を稼働することによる国家威信や研究者のエゴが優先されるのか。先進諸国の中で本邦だけがBSL4稼働がないことを慨嘆する向きがあるが、むしろ本邦には国際感染症の生の病原体が存在しないことを幸運とし、この状態を今後も誇りをもって堅持するべきである。

 

 国際感染症の病原体を国内に持ち込んではならない。天然痘ウイルスの撲滅計画が成功したのは、ヒトだけの感染症であったこと、歴史的に有効なワクチンがあったこと、国際協力が得られたことが大きい。その天然痘ウイルスは、現在、米国とロシアの2箇所でのみ保管され、それ以外には存在しない。現在問題となっているBSL4の病原体には、いずれも天然痘の場合のような有効なワクチは存在しない。例え存在しえたとしても、世界中に病原体を拡散することは、天然痘ウイルスの理から否定されるべきだ。有効ワクチンをはじめ、確実な治療法がない国際感染症に関しては、国内にその生の病原体を保有する合理的理由はない。

 

 今回問題にされている、アフリカの風土病の一つであるエボラ出血熱は、流行中の現地に隔絶し、決して世界中に拡散しないことによって、必ず現地で終息させることが最善策である。重篤な風土病の原因病原体を世界中に持ち込んで搬入国を次々に風土病国化し、流行を国際的に拡散させてはならない。この感染を世界に拡散させないための国際協力が必須である。そのために、流行現地に国際協力のBSL4施設を拡充強化することこそが最重要である。その施設は、実験室感染に対応できる隔離病院施設が必須であり、BSL4施設以外へのそのウイルス感染者を介した二次感染を阻止しなければならない。つまり検疫のBSL4施設内にのみウイルスを限局しなければならない。一方、ウイルスの基礎研究ならびにワクチン開発は、流行現地での国際協力で実行されるべきであり、世界の先進諸国が率先して予算的、人的、技術的協力を含めて負担するべきである。

 

 以上の条件下に、各国内にあっては、国際感染症の病原体を水際で侵入阻止することに全力を挙げることになる。そのために検疫の機能を拡充強化する。各国内への病原体侵入を阻止するためには、WHOを中心とする感染流行情報に基づいて検疫機能を強化し、検疫所で診断用検体としての体液を採取と同時に不活化し、遺伝子検査等にて診断する。結果が万一陽性のときは、被験者はそのまま検疫施設内に設置された隔離病院施設に搬送され入院する。以降は対症療法の下に発症期間を考慮して経過を観察する。経過観察中に検査のために採取される検体は、すべて採取と同時に不活化される。また、被験者と介護者等の生活用品等は、隔離病院施設内で直ちに滅菌して交換される。確定診断のためと称する生ウイルスの培養を実施してはならない。すべての診断検査材料および患者由来のものは直ちに施設内で滅菌処置する。この点で、再度、国内に国際感染症の生きたウイルスを持ち込まない基本を厳守しなければならない。患者と診断や介護等のためにコンタクトする検疫施設の要員は、観察経過の期間中は施設内に隔離され、一般社会への往来を禁じる。検疫所施設内に設備されバイオハザード対策がなされた宿泊施設を使用することになる。飲食物等の外部からの搬入もバイオハザード対策の下になされる。

 

 バイオテロ対策の徹底化。バイオテロの攻撃を想定して、攻撃対象となる施設を限定し、対策を強化する意味においても国際感染症の生の病原体が存在する可能性のある施設は感染流行地に限定するべきである。また、人口密集地での施設におけるバイオテロ防御は極めて困難であり、この点でも現在すでに存在して機能している成田と関空の検疫施設を拡充強化して警備的にも対応するのが現実的である。

 

 現在では、結核を別にすれば、一般社会で大問題となる致死的な感染症流行はほぼ制圧されている。一番の問題は、国際感染症の国内侵入と感染流行である。BSL4施設が稼働して国際感染症の生きた起因病原体が取り扱われるようになるならば、その病原体の国内流行は、当該BSL4内で扱われている病原体由来以外にはない。現代のバイオハザードは、バイオ施設が原因となるとの基本的見解は間違いなく正しい。BSL4稼働後に万一国内で国際感染症が流行したときに、人口密集地の武蔵村山市にある感染研のBSL4施設を稼働させた責任を誰がとりうるのか。

 

 国際感染症の病原体を取り扱う施設としてのBSL4は、上記の条件を満たしたものは未だどこにも存在しない。現在の武蔵村山市にある感染研のBSL4施設においては、これは必須の条件を満たす物理的(敷地的)余裕すらもないことを認知する必要がある。

 

【参考】

・日本学術会議提言(2014320日)「我が国のバイオセーフティレベル

4(BSL−4)施設の必要性について」に対する意見書(2014828日付)

・厚生労働大臣、国立感染症研究所長あて、「国立感染症研究所村山庁舎BS

L4施設を稼働しないことを求める要望書」(201522日付)

武蔵村山市長あて「BSL4施設実験停止状態の継続」の立場の堅持を求める要望書」(2015212日付)

*いずれもバイオハザード予防市民センターHPhttp://www.biohazards.jp/)参照


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