自衛隊の生物兵器対処研究についての当センターの見解


1. 米国の軍事戦略に沿った生物兵器対処研究に反対する

 私たちは、日米安保条約と日米新ガイドラインならびに今政府が提案している有事法制の下での米軍への軍事協力を目指している自衛隊の生物兵器対処研究には反対する。なぜなら、自衛隊の生物兵器対処研究は、日本国民を生物兵器の攻撃から守ることをその実際の目的としているのではなく、現実には「周辺事態」発生時における米軍の軍事行動による戦闘状態において生物兵器が使われた結果としての「細菌汚染」の下で自衛隊が米軍に協力していくことを前提とした研究であると考えられるからである。それは、「友好・同盟国に生物兵器環境の中での作戦に備える」ことを求めた米国の国防報告(2001年度)からも明らかである。 それとともに、私たちは、生物兵器を根絶することが生物兵器戦争を起こさせないための最も有効な手段と対策であると考え、現在143カ国が締結している生物兵器禁止条約を各国に遵守させるための検証規定を定める議定書の批准を成功させるために日本政府が全力を傾けることを求める。

2. 自衛隊の生物兵器対処研究への感染研の協力に反対する

 私たちは、生物兵器対処研究を軍事機関が行うことに反対する。なぜなら、生物兵器対処研究は生物兵器として使われる可能性のある細菌・ウィルス等の病原体の研究である以上、容易に自らが攻撃に使うための生物兵器開発の研究に転化しうるからである。かつての旧日本陸軍の731部隊は、「関東軍防疫給水部」という名前が示すように、表向きは生物兵器からの防護がその任務であったが、実際に彼らが行ったことはまさに生物兵器の研究と使用であった。国立感染症研究所はその創設時にはこの731部隊に関係した医学者たちをその要職に迎え、現在でも感染研におけるこれらの医学者たちの人脈的、思想的な流れが断ち切られているとは言いがたい。このような状況で、感染研が自衛隊の生物兵器対処研究に協力することは、現在でも秘密裏に行われているという米軍の生物兵器開発研究に自衛隊と感染研が協力するかもしれないという危惧を抱かせるものである。なお、すでに防衛庁から感染研に配布されているといわれている莫大な額の研究費は直ちに返上されるべきである。このような理由で、私たちは感染研が自衛隊の生物兵器対処研究に協力することに反対する。

3. 大都市周辺での生物兵器対処研究の中止を求める

 私たちは、人に感染症を引き起こす危険な細菌・ウィルスを研究する生物兵器対処のための研究所ならびに生物兵器の攻撃で感染した傷病兵士を収容・治療する野戦病院を多数の住民が住む大都市周辺に設置することに反対する。陸上自衛隊は、世田谷区にある三宿駐屯地に医学実験隊と医学・特殊武器衛生研究科を設置したが、周辺には学校や公園、団地が集まっており、感染実験や傷病兵士の治療や研究を行うことを任務とする部隊や研究所は周辺住民に感染被害をもたらす可能性があり、住民の不安を増すばかりである。したがって、私たちは同部隊及び同研究科の設置に反対する。 また、陸上自衛隊朝霞駐屯地に設置された陸上自衛隊研究本部は、NBC兵器(核・生物・化学兵器)への対処のための総合的研究本部である。同駐屯地は東京都練馬区、埼玉県の朝霞市、和光市、新座市にまたがっている。病原体実験によるバイオハザードの発生が憂慮されている今日、致死性の細菌・ウィルスの実験・研究を広域都市の中心で行うことは、周辺住民の健康を損ない、住民に不安と恐怖を抱かせるものである。このような理由で、私たちは、陸上自衛隊朝霞駐屯地の陸上自衛隊研究本部の設置に反対する。

4. 病原体管理法とバイオ施設規制法の早急な制定を国に求める

私たちは、市民生活の安全を保証するための病原体管理法の制定を求める。なぜなら、現在では人体に有害で危険な病原体の管理を定める法律がなく、誰でも容易に病原体を保有し、取り扱うことができるため、様々なバイオテロを含むバイオハザードが今後も起きる可能性があるからである。病原体の管理の無法状態はバイオテロの発生の温床となるものである。また、私たちは、同様に市民生活の安全を保障するバイオ施設規制法の制定を求める。バイオハザードの発生源でもあるバイオ施設を国が管理・掌握することは、バイオ施設からのバイオハザードの発生を防止するだけではない。万が一にでもバイオ施設で生物兵器の研究が行われないようにするために、施設の設置の国への届出、認可ならびに施設の査察、罰則等とともに、実験の届出・認可を定めたバイオ施設規制法の制定を早急に求めるものである。


2002年7月3日

バイオハザード予防市民センター
    
代表幹事 本庄重男



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