■「エボラ出血熱と感染研武蔵村山分室BSL-34施設」報告概要        

新井秀雄(代表幹事)

 

19766月、中部アフリカのスーダンで発生した急性の出血性感染症は、病原体が分離されて「エボラウイルス」と称された。その後、主として「中部アフリカ」での風土病として散発的な小流行がみられてきた。ところが2014年になって、突然に何故か「西アフリカ」で流行が見られ国際的に大きく注目されてきた。病原体の中でも最も危険性の高いウイルスによる感染症として、その生ウイルスの取扱いはBSL-4施設に限られている。現在、国内では実質的な病原体用のBSL-4施設は、国立感染症研究所(感染研)の武蔵村山庁舎に在るところの、1981年に建設されその後2008年に改修工事が完了している施設が唯一のものであるが、建設当初から施設周辺の住民や市議会等の施設稼働反対により本来のBSL-4施設としての利用は停止状態のまま今日にいたっている。この間、19873月にアフリカのシェラレオネから帰国した人にBSL-4施設取扱いのラッサ熱ウイルス罹患の疑いが持たれ、その時は患者材料を米国に送って検査した例があるが、その後今日までの二十数年間、BSL-4相当の感染症ウイルスの国内侵入が問題となることは一例もなかった。現在では、BSL-4該当ウイルス感染症の疑いの検査材料は、現場で直ちに不活化処理され、それ以降の早期診断検査はBSL-3以下の施設で実施できる方法が確立しており、その試薬等は感染研に用意されている。従って、今回のエボラ出血熱疑いの場合も、その診断は感染研でのBSL-3以下の施設で対応し、いずれも陰性結果であった。この意味で、当該ウイルスの国内侵入を阻止する対策上での実質的な問題はなく、今後も緻密な国際的情報協力の下に検疫での侵入阻止が継続して最重要となる。

要言すれば、当該ウイルスの侵入を阻止する上で最も重要なのは、検疫であって、BSL-4施設の稼働そのものではない。現在、BSL-4稼働を最も欲しているのは基礎医学関係のウイルス研究者等であるが、彼らの知識欲のために、当該の生きたウイルスを国内に持ち込んでBSL-4施設で生きたウイルの取扱いを実施することは、本来的に国内に存在しない最高度に危険なウイルスによるバイオハザードの危険性を抱え続けることになる。この問題に関して、より詳しくは日本学術会議提言(2014314日)「我が国のバイオセーフティレベル4(BSI-4)施設の必要性について」に対して提出した当会(バイオハザード予防市民センター)の「意見書」(http://www.biohazards.jp/ に掲載)を参照されたい。

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