感染研裁判・科学を冒涜する破廉恥判決

ー「国の統治一般の問題は裁判手続きの範囲外の事柄である」として司法の行政からの独立を否定する不当判決ー


「 原告らの本訴請求は、感染研のような公益性の高い研究施設等を設置する 場合の、国、公共団体のともすれば将来的視点を欠いた、目先の利益調整から 脱しきれない判断手法が、感染研の設置、運営についても現われているとし て、これを非難するという一面を併せ持つものであるようにも思われる。 しかし、右の点は、仮にそのような批判が当たる面があるのしても、国の統治一般 の問題であり、裁判手続きの範囲外の事柄であるから、本訴請求に対する判断 に影響するものではない。」という判決書の最後の言い訳じみた一文に裁判官 (藤村啓)の 姿勢が顕著である。

東京都・新宿区戸山の第1種中高層住居専用地域内にある国内最大の病原 体・遺伝子組換え実験施設=厚生省管轄・国立感染症研究所の再移転と実験差 止めを求めていた裁判の判決が提訴以来12年を経過した27日、東京地裁で下さ れ、「原告らの請求をいずれも棄却する」という不当判決が示されました。

27日の午後の判決文検討会議でだされた問題点の概要を以下に記します。

(1)立証責任のすべてを原告に求める。

病原体が漏れて、周辺住民の健康を侵害する恐れがあることを原告側が主張 したのに対して、抽象的危険だけでなく具体的危険性の立証責任を求めている。
これは原発訴訟判決で示された、抽象的危険性を原告は立証すれば事足り、具 体的な危険性のないことの立証責任は被告にありとした判例の流れを無視する ものである。
それは裁判所が、今回の訴訟は公害訴訟ではないと勝手に決め付け、一般の 不法行為紛争の事件に性質をすりかえたことによる。

(2)原告の多数の具体的な危険性の指摘を無視し、被告の主張を根拠も示さ ず鵜呑み

原告は500件以上の書証、専門家の証言、設計図書などあらゆる角度から詳 細な検討を踏まえ具体的な危険性を指摘してきた。

しかし、判決では原告の主張を一切の根拠を示さず「抽象的な不安」として 認定せず、被告側の主張を何の疑問も根拠も示さず肯定している。

そればかりか、HEPAフィルターについては、99.99%の除塵効率で 0.01%は漏れることを認めながら(少しでも漏れれば条件によっては幾何級数的に 増殖する可能性もある)、100%と同じだとして、漏れていないと勝手に判断してい る。

(3)WHO指針の無視を当然視

バイオ施設に関する法規制のない日本において、被告が判断基準として挙げ たWHO指針を原告側がチェックした結果、具体的に逸脱している内容として 数十項目を指摘した。
しかし、判決は、WHOは国内法に適応される規範では ないとし、WHO指針は無視してよいという驚くべき判断を下した。

(4)阪神淡路大震災の教訓と96年建設省耐震基準を無視。耐震診断の実施すら被告に 促していない。

この耐震基準は「官公庁の建設等に関する法律」に基づく技術基準の一つで 国は遵守する義務がある。裁判官の人格が問われる。

(5)建築基準法違反の判断を避け、問題をすり替え。

原告は、バイオハザードの危険性や大規模な事務所施設など近隣環境を害す るおそれのある用途が主であるから、建築基準法48条の用途地域規制に反する と指摘したのに対して、判決では「建築基準法違反の事実から直ちに病原体等 漏出の危険があるとする論旨自体に無理があり、科学的な見解とは言えない」 と驚くべきすり替えをしている。裁判官の国語能力が疑われる。

(6)私文書偽造を「格別の不正義は認められない」と肯定

倉田によるオビアット、リッチモンド査察報告書の署名偽造を合法としてい る。KSD事件に配慮したのか、司法の腐敗を顕著に示すものである。

(7)遺伝子組換え技術は、将来の食糧問題を解決する技術と評価。

バイオテクノロジーを国策として推進する政府・企業に尻尾をふり、バイオハザード のなんたるかをまったく理解できず、安全神話の虜になっている。 スターリンク事件で渦中にある政府を支援する意図か。

なお、私が感じるのは、以下の点である。

・市民運動に対する裁判官の時代錯誤の敵視思想

・国の政策に忠実たろうとする飼い犬的心情

・NPO法成立という時代感覚がなく、公益性を国側にしか認めない官僚思 想。

・数学、科学に対する無知蒙昧

・判決文を作成する段階で、国・厚生省・感染研とすりあわせを行ったと疑われるにた るあとがみうけられる。司法と行政官僚の腐臭癒着構造が匂う。



裁判官・藤村啓氏とは?

昭和52年から61年まで、東京法務局訟務局付及び法務省訟務局付で、ちょうど今回の裁判でいうと感染研側の代理人という立場で仕事をしていた。
平成1年から4年まで京都地裁にいたが、この間の判決を知る人の間ではどうしようもない判決を下す札付き判事とのこと。
一般的には高裁では地裁より有利な判決を得るのは困難といわれているが、藤村氏が下した判決の場合は例外と考えてもよいのではとの指摘もある。
こうした人物をこの裁判の判事に指名した構造を撃つべきか。

バイオ時代の安全性・環境研究センター 事務局長 川本幸立


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