■科学者として 「秘密保護法」―「感染研」は闇の中へ?               

                  新井秀雄(代表幹事)

 

2013126日、「秘密保護法」が国会で成立した。この法律の内容は、@「その漏えいが我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」を行政機関が「特定秘密」に指定する。A秘密を扱う人、その周辺の人々を政府が調査・管理する「適正評価制度」を導入する。B「特定秘密」を漏らした人、それを知ろうとした人を厳しく処罰する、などが柱という(詳細は、日弁連ホームページを参照:   

http://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/news/131005.html)      

これより先に、「感染症法」が2007年に改定された。それは、米国における2001年9月のニューヨーク中枢同時テロ、そしてその直後の910月の炭疽菌混入郵便物による死者が発生した事件に驚愕した結果、生物テロ対策を盛り込んだ改定であった。この結果からか、現在では全国のP3施設での取扱い病原体等の実質的な情報開示はされなくなってきた。この「秘密保護法」によってさらに広範にバイオハザード防止に関連する情報が秘匿されることが危惧される。具体的に、国の機関である「感染研」に対してバイオハザード関連の諸種情報公開を求める市民側からの正当な請求は、これら2つの法律によって一方的にすべて拒否されてしまうことが予想される。本来開示されるべき情報が行政機関当局の一存で「特定秘密」に指定できるからである。さらに、「感染研」内部で「感染症法」の下に研究活動等に従事している職員はすべて、情報公開を拒否する「秘密を扱う人」とみなして、「適正評価制度」が厳しく適用されることになる。こうして、「感染研」のいかなる内部情報をも漏らす者は、厳しく処罰される法的な根拠が当局に与えられる。

私事で恐縮であるが、自分は2001年に感染研当局によって文書による厳重注意処分をうけた。その内容は、ある書誌に掲載された中に「当研究所の研究内容や運営実態を歪曲し、幹部職員を事実に反して誹謗中傷する内容を発表した」、このことは「当研究所の信用を著しく傷つけ、公務の円滑な遂行に支障を来すものであり、誠に遺憾である。よって、今後かかることのないよう厳重に注意する」というものであった。今回の「秘密保護法」の下では、このような処分で済むはずがない。今後、感染研の内部において、国民全体への奉仕者(公僕)として、良心にもとづきバイオハザード防止を第一に「ならぬものはならぬ」との志がますます実現困難になることを憂いる。ますます強まりそうな当局の統制下における抑圧された精神状態下での基礎医学研究の危うさを思うと、何よりも「秘密保護法」を廃止しなければならない。 

戻る