■科学者として                                 

新井秀雄(代表幹事)

「コリンズとラインの微生物学実験法(第8版)」の出版

C.H.コリンズ、P.M.ライン、J.M.グランジ、J.O.ファルキンハムV 編著 

本庄重男、新井秀雄、長島 功 訳、2,013年2月、緑風出版)

 

 これ程の大部のものになるとは、翻訳の分担が決まり取り掛かった最初の頃には思いもしなかったことでした。翻訳が進むうちに薄々それを感じ始め、最終的にはどのような体裁になるのかと…。出版され手にとって見てその厚さと重さに驚きました。

 2分冊の構成もあったかと思いましたが、やはり医微生物学(ウイルス学以外の細菌学と真菌学が主体)の教科書として一冊にまとまってあることの便宜性があります。巻末には細菌名による索引が別途設けられ、医微生物学の辞典的な使用もできそうです。全体的に、約半分弱の分量(第1〜12章)が微生物学の総論的内容であり、続いて食品関連の微生物学(第13〜18章)、環境微生物学(第19章)、水の微生物学(第20章)、そして各種細菌および真菌の各論(第21〜52章)が続く構成となっています。

 本書の第1章は、「微生物学実験における安全性」で始まっていますが、この構成に原著の筆頭編者である元WHO顧問の故コリンズ博士の特別な思いを感じました。博士はケネディ博士とともに予研(現感染研)裁判に国際査察の原告側査察者として、見事な科学的査察鑑定書を提出してくださいました。生物災害防止に関する英国の学問的かつ実際的実力とレベルの高さに感嘆しましたが、こうして本書が出来上がり読み直してみると重々合点のゆくところです。第2章「品質保証」、第3章「実験室設備」、第4章「感染材料の滅菌、消毒、除染」となっていますが、この1〜4章はWHOの指針「Laboratory Biosafety Manual, 2004」(邦訳『実験室バイオセーフティ指針』)を種々検討される際に合わせお読みいただけると参考になることと思います。

 第5章「培地」、第6章「培養法」、第7章「同定法」、第8章「自動化された方法」、第9章「真菌学的方法」、第10章「微生物数の測定」、第11章「臨床材料」、第12章「抗菌剤感受性試験」と、基本的な医微生物学教科書としての内容が網羅されています。次いで第13章「食中毒と食品媒介疾患」、第14章「食品微生物学:一般法則」、第15章「獣肉と鶏肉」、第16章「新鮮食品、保存食品および長期保存食品」、第17章「鮮魚、貝類および甲殻類」、第18章「牛乳、乳製品、卵およびアイスクリーム」、第19章「環境微生物学」、第20章「水の微生物学」と続きますが、この各章は教科書としての利用はもとより、それぞれ実際の現場で日々活躍される方々にも読んでいただきたいところです。各論部分に関しては、実学としての性格から最新の知見、情報等は専門学術雑誌等に譲るのは当然ですが、教科書として整理されたこれまでの知見の集積として有益と思います。

 各章の末尾には、参考文献が掲載されています。容易に探し出せるように誤植を避けて原文のまま記載されています。検索される上でこの方式が便宜と考えました。

 医微生物学(細菌学)教科書として、医学、獣医学、薬学、公衆衛生学等の教育過程の皆様に広く読んでいただきたいと思いますが、それ以上に医療関係、保健所、衛生研究所等の実際の現場で活躍される現役の方々に読んでいただけたら幸いです。同時に、生物災害防止に関わる皆様にも是非参照していただきたく存じます。



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