「日本感染症学会提言」(20100125)に対する抗議声明

                           20101012

バイオハザード予防市民センター         

                   代表幹事 新井秀雄・臼田篤伸

               連絡先:千葉市中央区仁戸名町28219

                    電話&FAX 0432662495

 

『日本感染症学会提言』(20100125)−新規薬剤を含めた抗インフルエンザ薬の使用適応について− は、わが国のインフルエンザ医療が進もうとする徹底した薬漬け医療の道を示したものである。日本感染症学会は、「提言」「ガイドライン」を発表することにより、「薬漬けインフルエンザ医療」の尖兵の役割を果たしている。当センターは同提言の項目順に問題点を指摘しつつ、その危険性を明らかにしたい。その上で、同提言に強く抗議するとともに、撤回を求めていきたい。

■前置きについて

日本感染症学会の新型インフルエンザ対策委員会・診療ガイドラインワーキンググループが中心となって、インフルエンザ新薬導入を強力に推し進める姿勢をまず打ち出している。すなわち、「新型インフルエンザ診療ガイドライン(第一版)、2009915日」で、「原則として、全ての病院と診療所がインフルエンザ患者の診療に当たることが新型インフルエンザ対策の要諦であり、ノイラミニダーゼ阻害薬の投与により、重症化を防ぎ入院や死亡を減らすことが最大の目標となる」旨を提言した。更に「一般医療機関における新型インフルエンザ対応について第2版、2009915日」において「わが国での新型インフルエンザ感染による被害が少ないのは、患者の早期受診と早期治療開始によるものと考えられ、今後の蔓延期においても可能な限り全例に対する発病早期からの抗インフルエンザ薬による治療開始が最も重要である」と提言し、抗インフルエンザ薬徹底投与の姿勢を貫いている。そして、「オセタビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)に続く新規治療薬の開発促進と早期承認が望まれる」との「強い要望も出している」と記す。多数のインフルエンザ薬による選択肢治療への突入を予告した上で、まもなく発売されるペラミビル(ラピアクタ・静脈内投与)の売込みを当面、最大の目標にしている。同類のラミナビルも近く承認されることで、4種類のノイラミニダーゼ阻害剤が揃うことになる。さらに、RNAポリメラーゼ阻害薬・ファビピラビルの開発も最終段階に入ったとのことだ。これでは、日本感染症学会は、まるで製薬メーカーのスポークスマンそのままではないか。

■「基本的な考え方」について

今回の新型インフルエンザにおいて、基礎疾患の有無にかかわらず、健康人であっても重症化するとの警告を発している。タミフルによる異常行動、突然死などの薬害の危険性を一切無視した暴言という他ない。健康人の重症化の原因をすべてインフルエンザウイルスに転嫁するという根本的な誤りを犯している。客観的な薬害事実のデータを巧みな統計操作を加えて、タミフルの危険性を完全に葬り去ったものだ。あわせて、新型インフルエンザワクチンの莫大な無駄遣いには一切言及せず、治療と予防の分業化を強調し、治療に関しては、外来におけるインフルエンザ薬の全面的投与の正当性を主張し、全国民への薬漬けをますます助長するものとなっている。

■「重症度の観点から見たインフルエンザ患者の分類」について

 重症度に応じて2群に分けている。A-群は入院管理が必要とされる患者。B-群は外来治療が相当とされる患者。A-群にはまず、重症で生命の危険がある患者が挙げられ、その最初に、昇圧剤投与や人工呼吸管理等の全身管理が必要な例を挙げている。09インフルエンザで死亡した多くの例で、タミフル服用後、短時間で呼吸抑制が起きている。これはタミフルによる中枢神経系への分子標的作用と見るのが自然である。従来のインフルエンザとの違いとして、際立った特徴でもあった。わが国の新型による死亡率が低かったと自負するが、実際は軽いインフルエンザであり、タミフルを使わなければ命を落とさずに済んだことを、医薬ビジランスセンター代表の浜六郎氏が明らかにしている〔『薬のチェックは命のチェック』NO37(NPO法人医薬ビジランスセンター)〕。これらは「分子標的型脳症」「中枢抑制型脳症」「タミフル脳症」などと言い表すことができる。

■「抗インフルエンザ薬について」に関して

 従来の薬剤と、まもなく発売されるもの、認可申請準備中のものを含め、5種類の抗インフルエンザ薬が掲げられている。タミフル、リレンザはすでに安全性が確立されていることを前提に書かれている。したがって、3番目のラピアクタ(ペラミビル)の売込みがメインの記載である。同じノイラミニダーゼ阻害薬だ。アメリカのバイオクリスト社の開発だが、世界で最初に日本で発売されるとの触れ込みである。わが国がアメリカ製薬企業にうまく操られていることをうかがわせる。日本でのライセンスは塩野義製薬が持っていて、臨床試験も同社が行っているとのことで、初の国産抗インフルエンザ薬という。静脈内投与製剤(点滴静注で用いる)で、抗インフルエンザ薬使用の選択肢を増やせるのが狙い。4番目は、同じくノイラミニダーゼ阻害薬のラニナビル(吸入粉末剤)で、申請準備中とのことだ。5番目には、RNAポリメラーゼ抗インフルエンザ新薬(ファビピラビル)が登場し、現在臨床試験が行われていて、売込みも進行中とのことだ。日本感染症学会が新薬開発と、売り込みに尽力くしている姿勢が鮮明だ。

■「抗インフルエンザ薬の使用指針」について

今年から発売されるラピアクタ(ペラミビル)とあわせ、従来のタミフル、リレンザを用いて、これらの使い分け、組み合わせによる使用方法が記載されている。入院管理が必要な患者と外来治療が相当と判断される患者に分けて記述し、上記3薬剤を症状や利便性を考慮して使用することが強調されている。この秋から冬にかけて、新聞等で大々的に宣伝されることは間違いない。最後の注意事項で、ラピアクタは今年の供給が少ない心配があるから、経口や吸入での投与が困難な患者、確実な投与に懸念がある患者の分が滞らないよう配慮したい旨をきすなど、手の込んだ売込みに余念がない。

 

●バイオハザード予防市民センターの見解と声明

上記のように、「日本感染症学会提言」とは、インフルエンザに対して、タミフルを始めとするインフルエンザ薬投与万能論を展開したものといって過言ではない。さらに、タミフルやりレンザに続く新規治療薬の開発促進と早期承認を求める内容である。当面の目的はペラミビルが発売されるのに合わせ、その売込みに最重点がおかれている。それによって、今後はインフルエンザ薬使用に当たり、多くの薬の選択肢の時代が到来したことを予告している。欧米製薬メーカーの意向がストレートに反映され、日本国民を新薬漬けのモルモットにすることと何ら変わりがない。インフルエンザ薬による薬害の被害を反省するどころか、完全に無視し、有効性ばかりが強調されている。健康人の重症化は、全てインフルエンザに責任転嫁する手法だ。タミフルによる異常行動、突然死などの副作用の客観的事実のデータを、巧みな統計的手法を駆使して、その無害性を捏造したことが浜六郎氏の詳細な調査で明らかにされている〔『やっぱり危ないタミフル』(金曜日)〕。

以上を総合すると、「日本感染症学会提言」は、インフルエンザ新薬へ国民を総動員しようとする恐るべき暴挙と言わざるを得ない。現状は、タミフル、リレンザ、ラピアクタの組み合わせによるインフルエンザ薬万能医療の泥沼化が始まったと見て差し支えない。当センターは「インフルエンザは夜中に進みやすい」などの発症原理に基づく合理的自然治癒対策を提案し続けてきた。これらを一切無視し、「ワクチン・インフルエンザ薬至上主義」とも言える予防・治療対策を妄信し続けることを深く憂慮するものである。インフルエンザは上気道感染症であり、自助努力による予防がやり易い疾患である。「手洗い予防」などの名目的な自然予防策を根本から見直して、実のある自然予防対策にまず目を向けるべきである。

当センターは、国民を薬漬け医療に総動員しようとする「日本感染症学会提言」に断固抗議する。あわせて、安全で安心、安価なインフルエンザ対策をこれからも推進していくことを表明する。