「新型インフルエンザ対策特別措置法」成立に対する抗議声明

                         バイオハザード予防市民センター

201253 

427日の参院本会議で「新型インフルエンザ対策特別措置法」が可決成立した。同法は強毒性の新型インフルエンザの流行に備えたものとされ、感染拡大の防止を最大の目的としたものである。その目的自体は必要なことだが、内容と手法において多くの問題点を孕んでいる。そのため当センターはこの3月に声明を発表し、この法案反対の根拠を提示し、主要8政党と厚生労働委員会議員への働きかけを行ってきた。同法の成立にあたって改めて主要な問題点を指摘し、同法の不当性に強く抗議する。
近年、新型インフルエンザの脅威が盛んに煽られているが、そもそもそういう脅威が現実に存在するのか疑問である。福島第一原発の事故を受け、政府はいたずらにパニックを煽られる事態になることを懸念し、SPEEDIの情報を迅速に公開することをしなかった。このように、現実に存在する放射能の脅威に対しては情報を隠し、いまだ存在すら未確定の新型インフルエンザの脅威を政府自ら煽りパニックを誘発するような言説を流布することは整合性を著しく欠いている。

政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」では、最大入院患者を約
200万人、死亡患者を64万人と想定しているが、これは1918年に発生したスペインインフルエンザを元にした推計である。現在の医療、生活環境との違いを無視したものであり、時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ない。また新型インフルエンザ緊急事態を宣言する中でとられる措置には、基本的人権を損なう事態が多数起きることが懸念される。例えば、外出の自粛の要請、集会等の制限、土地等の使用等に関する要請又は収用等である。また、国民の予防接種が謳われているが、予防接種の効果への疑問、副作用による被害の発生が報告されている中で、全国民が強制的に予防接種を受けなければならないような法制度は、個人の尊厳を侵すものである。

近年、インフルエンザが極めて重篤な疾病であるかのようなキャンペーンが展開されて
いるが、本来、インフルエンザは風邪の一種として対策がとられるべきものである。そして、感染を防ぐために重要なことは、清潔な環境、十分な栄養、十分な休養である。現実には経済格差が広がり、この3つの条件を満たすことが出来ない層が確実に増えている。本来であれば、政府は憲法25条の精神にのっとり国民の健康を保障するために、これら衛生環境を率先して整えるべきである。しかしながら、「新型インフルエンザ対策特別措置法」は、危機管理的な発想しかなく、上記の一番重要な対策への考慮が欠如しており、法の趣旨である「国民の生命及び健康を保護し、国民生活及び国民経済の安定を確保する」こととはかけ離れている。

新法の成立に当たり、以上の視点とこれまでの具体的事実に基づいて、あらためて当センターの抗議声明を発表する。

1)新型インフルエンザ対策は、「危機管理対策」としてではなく、感染症対策として感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で規定する基本理念(第2条)、国及び地方公共団体の責務(第3条)に従い、感染症の患者や関係住民などの人権を最大限尊重することをすべての基本とすること。したがって、大震災の経験も踏まえて現状の感染症法について地方自治、関係者の基本的人権尊重の立場を堅持すべきである。危機管理対策によるこの新法の制定は、一層の監視の強化、人権侵害、情報操作につながることが危惧される。
2)2009年の新型インフルエンザ騒動時の以下の教訓をしっかりと踏まえること。
@ 「いつ起こってもおかしくない」「待ったなしでやってくる」との触れ込みで、国立感染症研究所などによる新型インフルエンザ発生「予測」に輪をかけて、マスメディアによる恐怖報道が過熱し、国民を異常な不安に陥れた。専門家らによる不用意な言動がマスコミを刺激し、さらに誇張され報道された。現代科学に基づき、冷静に多方面から分析するならば、自ずと新型ウイルス対策が導き出されるはずである。実際、2009年の新型インフルエンザはオーストラリアの流行状況から弱毒性であることが初めからわかっていた。新法の制定により、WHOが新型インフルエンザ流行の恐れを発信し、マスコミがパンデミックと大騒ぎすれば、2009年のインフルエンザ騒動のケースが確実に適用され、国民がワクチン接種に総動員されるなどの手順が整ったのである。
A ワクチンやタミフルばかりをインフルエンザ対策と決め付けている研究者・官僚(ワクチン・タミフル オンリー路線)によって、「危機管理」の名の下に1千億円を超える税金が無駄に遣われたことは既に述べたとおりである。NPO法人「医薬ビジランスセンター」理事長の浜六郎氏らの研究結果によると、09年流行の新型インフルエンザで死亡した国内約200人の分析から、治療薬タミフルの使用で容態が急変して死亡するリスクが高まっていること、タミフルを処方された112人のうち、処方後12時間以内に呼吸困難に陥った人が37人、一方、治療薬を処方されなかった25人で12時間以内に呼吸困難になったのは1人だけだった、これらからタミフルを処方された人の場合、容態が急変して死亡する危険性は、治療薬なしの場合と比べて約3.8倍高いと推定される、としている。ワクチンやタミフルは、その効果への疑問とともに、重大な副作用の危険性をはらんでいる。

ウイルスという病原体をワクチンとタミフルなどの新薬によって攻撃することを至上とする今日のインフルエンザ対策は、いわゆるEBM(Evidence Based Medicine とは程遠いものである。ワクチン、新薬の強制は人命を損なう可能性もある重大な人権侵害に他ならない。
3)製薬企業と医療側の経営戦略に翻弄される新型対策を根本的に改めること
欧米を中心とする今日の医学は、西洋医学またの名を「臓器別医学」と呼ばれている。病名のつけられたその臓器ばかりに目が奪われる医療のことである。感染症の場合は、専らその病原菌、ウイルスを標的とした医療が徹底して行なわれる。言うまでもなくそのほとんどは、薬とワクチンである。欧米仕立ての巨利をつかむための医学の経済論理が、今わが国でも罷り通っている。その結果が今日の徹底した薬漬け医療であり、あちこちで矛盾が噴き出している。

インフルエンザ薬タミフル(スイス・ロシュ社製、日本の発売元・中外製薬)は、重大な異常行動死や、突然死事故、死への恐怖体験などを引き起こしてきたことは、今や公然の秘密である。脳細胞にも存在するノイラミニダーゼ酵素の阻害を引き起こす「分子標的薬」としての危険性が現実のものとなっている。こうした流れの中で、タミフルの副作用を調査する厚労省の研究班ならびにその協力者らに、中外製薬から多額の資金が提供されていたことが明らかとなったが、その責任者が変わっただけで責任の所在は闇に葬られたままだ。大手製薬企業とそれを支える研究者らの、なりふり構わぬ圧力によって国の医薬行政が大きく歪められている。インフルエンザワクチンは、その有効性を示す調査は全く行われていない。その上、数々の副作用被害などがずっと指摘されてきたことを忘れてはならない。


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