国立感染症研究所への公開質問状の送付と回答の経過

長島 功(当センター事務局長)

 

 国立感染症研究所(以下、感染研)は、「国立感染症研究所病原体等安全管理規程」(第320074月)において、WHO”Laboratory Biosafety Manual ”2004)での”community”の訳語として「関連者」なる造語を当てた。以前の版では、「地域社会」という人口に膾炙している訳語を選択していたにもかかわらず、今回の第3版で意味不明な「関連者」なる訳語を用いた理由を当センターは公開質問状で明らかにするよう求めた。

 第1回目の公開質問状は、20094月6日に送付し、531日に回答が寄せられた。その回答は、所長名ではなく、所名で送られてきたものだった。果たして、公開質問状が所長に渡っていたのかどうかも疑わしい。送られてきた回答は、すでに感染研がそのホームページに掲載している文書を参照せよ、というものであった。われわれは、その文書を読んでから公開質問状を出した(というのは、すでに公開質問状が出された当時にはその「回答」なる文書はホームページに公開されていたので)にもかかわらず、公開質問状作成の前提となる文書を回答として送ってきた感染研の不誠実な態度にわれわれは憤りを感じる。

 そこで、われわれは、一応その回答として送られてきた文書が公開質問状の回答になっていないという批判の文書を同封して、9月25日に2回目の公開質問状を感染研に送付した。今度は、所長名で回答せよと注文をつけた。ところが、感染研は締切日になっても回答を送ってこなかった。無視したわけである。そこでやむなく、再々度、10月27に公開質問状を感染研に送付した。そして、ようやく121日に1130日付(1130日必着と求めたにもかかわらず)で回答が寄せられた。しかし、その回答は、最初の回答が今回の回答でもあるとし、疑問点があれば協議に応じるとの添え書きがなされていただけである。しかも今回の回答も、総務課から送られてきたものである。所長が公開質問状をじかに見ていたかどうかの疑いはまだ残る。

 以上が、感染研への公開質問状の送付とその回答の経過である。




         
公 開 質 問 状

                                 

国立感染症研究所所長

宮村 達男 殿               
                                                

                                                                      2009
15

                 バイオハザード予防市民センター

                    代表幹事 臼田 篤伸

                 ストップ・ザ・バイオハザード

 国立感染症研究所の安全性を考える会

     会 長 鈴木 武仁 

 

 20076月に国立感染症研究所病原体等安全管理規程が改訂されました。本規程の序言(2007531日)において貴職は、最近の海外感染症発生状況、保険医療環境の変化を踏まえ、生物テロによる感染症発生及びまん延防止を考慮して、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の一部改正(200761日施行)に対応するべく、しかもWHO等(以下「注」参照)の指針をも参考にして策定されたと述べられております。

(注)

WHO:Laboratory biosefety(まま)manualrd edition), Chapter9. Laboratory biosecurity concepts(2004)

WHO:Life science research:opportunities and risks for public health-mapping the issues(2005)

WHO:Biorisk management:Laboratory biosecurity guidance(2006)

OECD:Best Practice Guidelines for Biological Resource Centres, Chapter on Best Practice

            Guidelines on Biosecurity for BRCs(2007)

US CDC/NIH:Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories(5th Edition,2007) 

 これによると、「従来、国立感染症研究所としてはバイオセーフティの考えに基づく病原体等安全管理規程により、病原体や毒素の非意図的曝露或いは漏出事故の防止方法を定めてきた」「情勢の変化を踏まえ、バイオセキュリティ、即ち、病原体等の紛失、盗難、不正流失、意図的放出を防ぐための枠組みが要求されるに至った」として、「所内のバイオリスク管理委員会をはじめとする各種委員会及び内外の専門家で協議を重ね、病原体等安全管理規程を全面改訂」したことによって「病原体等の取扱いにおける、不注意、責任回避、不完全記録、行動規範欠如、倫理的考慮の無視等に起因する実験室感染、実験試料の紛失、不適切な作業、或いは意図的な不適切行為等を防ぐための規程を定めた」とされ、さらに、本規程の目的は「バイオセキュリティを確保した病原体の調査研究及び検査を促進する為に定めたもの」であり、「その運用にあたっては、正しく状況を判断し、公衆衛生に必要な業務を妨げる事態はさけなければならない」とされております。

 今日にいたるまで、国立感染症研究所の病原体等安全管理規程が国立感染症研究所の所内規程にとどまらず、広くわが国の病原体等の取扱関係施設における標準的な病原体等安全管理規程として重視されてきた経緯を考慮し以下の事柄を質問いたしますので、お答えいただけますよう要請いたします。

 

 

1.本規程13頁に掲載されている「別表1 付表1-1 病原体等のリスク群による分類」について質問します。

この箇所は、WHO:Laboratory biosafety manual(3rd editon) General principles IntroductionにあるTable1.Classification of infective microorganisms by risk grouppage 1)に該当するものと考えてよろしいかどうか。

2.本改訂第3版の別表1に記述されている「検定・検査・研究活動を行う実験室における通常の取扱い量及び取扱い方法を考慮し、ヒトへのリスクを基準として、病原体等を4つのリスク群に分類した。家畜、環境、大量生産、バイオテロリズム対策など、それ以外の条件下における病原体等のリスク群分類としては利用できない」として、「『病原体等取扱者』及び『関連者』(病原体等取扱者と感染の可能性がある接触が直接あるいは間接的に起こりうるその他の人々。)の健康への影響に基づき、WHOの『実験室バイオセーフティ指針第32004年)』の考え方をもとにして分類されている」と記述されていますが(同13頁)、上掲WHOの実験室バイオセーフティ指針第3版(2004年)の該当部分(Table 1)にある「individual  個体」を、本改訂版で「病原体等取扱者」と置き換えた理由は何か。また置き換えるにあたってどのような議論がなされたかを明らかにされたい。

おなじく、WHOの「実験室バイオセーフティ指針第3版(2004年)」にある「community risk 地域社会へのリスク」に換えて、本改訂版では『「関連者」に対するリスク』と置き換えた理由はなにか。置き換えるにあたってどのような議論がなされたかを明らかにされたい。

3.感染症研究所の従来の「病原体等安全管理規程」において定めてきた「病原体や毒素の非意図的ばくろ曝露或いは漏出事故の防止方法」に関して、今回の改訂第3版においては、どの箇所にこの「漏出事故の防止方法」に関する具体的内容が定められているのか、その該当箇所を指摘していただきたい。

4.3.の質問に関連して、本改訂版において病原体等取扱施設から地域社会へのバイオハザード発生の可能性をどのように規定し対処しているのか、その該当箇所を指摘していただきたい。

5.今回の改訂版においては、「バイオハザード」の用語に関しては「バイオハザード標識」を除けば言及されていない。「バイオハザード」の概念を意図的に排除したのであればその理由を回答されたい。また、「バイオハザード」なる概念は、現在においてはWHOをはじめとする諸外国においても使用されないものとなったのか否かをご教示いただきたい。

6.今回の改訂にあたって、「所内のバイオリスク管理委員会をはじめとする各種委員会及び内外の専門家で協議を重ね」たとあるが、この改定第3版を策定するにあたって、WHOとの間に協議がなされたのかどうか。もしくはこの「内外の専門家で協議を重ね」たとは、感染症研究所の内外の「国内の専門家」を意味するだけに留まるのかどうかを回答願いたい。

 上記質問事項2.との関連において、本改訂第3版で使用している「病原体等取扱者」および『「関連者」に対するリスク』の両用語に関して、英語による表記ではどのようは翻訳語になるかをご教示願いたい。

7.貴職は、本改訂第3版の序言において、「ここに示す規程は、この法改正に対応するために、WHO等(注)の指針をも参考にし、策定したものである」と記述されております。ここにある「WHO等(注)の指針をも参考にし」との記載が意味するところは、感染症研究所においては「WHOの指針」は「参考にする」ことはあっても、このWHOの指針を遵守する必要がないことを意図されておられるのかどうかを回答願います。

 

以  上 






感染研が回答として示した文書


国立感染症研究所病原体等安全管理規程の改訂

付属文書

図1

表1