201522

厚生労働大臣 塩崎 恭久 様

国立感染症研究所所長 渡邉治雄 様

                      バイオハザード予防市民センター

                         代表幹事 新井秀雄 臼田篤伸

                      連絡先:〒260-0802

千葉市中央区川戸町308-10(長島方)

電話043-266-2495

 

「国立感染症研究所村山庁舎BSL4施設を稼働しないこと」

を求める要望書

 

 西アフリカにおけるエボラ出血熱の感染者の拡大を受け、政府・厚生労働省は、国立感染症研究所(以下、「感染研」)村山庁舎のBSL4施設の稼働に向けて、地元自治体と協議を進めていると聞き及びます。

 このことについて以下、要望させていただきます。

 

【要望内容】

1.エボラ出血熱など病原体の早期診断、侵入防止と施設稼働は直接の関係は無く、公害の予防原則と住民の生命の権利を最大限尊重する立場から、感染研村山庁舎のBSL4施設は稼働しないこと。

2.前項「要望内容」、下記の「要望の理由」に対するご回答・ご見解を、2015227日までに文書でお示しいただくこと。

 

【要望の理由】

1.政府、感染研は、安全神話(HEPAフィルタ、キャビネット)に依拠し、施設の立地・欠陥を無視している



政府、感染研は、「感染症法」「感染研安全管理規程」を遵守し、HEPAフィルタ(注1)、バイオハザード対策キャビネット(以下「キャビネット」と言う)などを適切に使用しておれば、バイオ施設から病原体が漏れるなどして周辺に生物災害(バイオハザード)が発生する可能性はないから、BSL4施設を含めて人口密集地に立地しても何ら問題ないとする立場(いわゆる「HEPAフィルタ・キャビネット安全神話」)である。(注2)

そうであれば、そもそも感染症法や安全管理規程には平常時非常時を問わず「バイオハザードゼロ」を保証するに相応しい規定がなされ、感染研では「責任ある管理」がなされていることを立証し説明責任を果たす義務が政府、感染研にはある。

 しかし、政府、感染研はそうした義務を果たすことを怠ってきたし、感染症法や安全管理規程は「バイオハザードゼロ」を保証するにはほど遠い内容である。

 

(注1    HEPAフィルタは「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上を捕集する」性能を持つが、610mm角のフィルタで直径6mmの穴があっても検査に合格するものであり、穴の有無をチェックする「走査試験」(最大透過率0.01%を超えないこと)も直径0.25mm(250μm)の穴を許容するものである。(JIS 3800 解説より)

(注2    国立医薬品食品衛生研究所(P3施設)は府中市への移転が閣議決定されていたが、施設の立地などで住民から異議申し立てが行われる等の経緯もあり、移転先が川崎市の京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区内に変更したという事例もある。

 

2.情報開示文書から、感染研において「責任ある管理」は行われていないのは明らか



当市民センターでは、2013年度、法に基づき感染研に対し安全管理(主に戸山庁舎、村山庁舎)にかかわる文書の開示請求を行い、開示された文書内容を検討し、それを踏まえて感染研と文書による質疑応答も2回行った。

 その結果、以下のことが明らかになった。



@    キャビネットのHEPAフィルタについて、法で定める技術基準(JIS 3800)に従って厳密な現場試験が行われている根拠はなく、かつ技術基準に適合しない不良品が多数あるなど、技術基準を無視した管理が横行している。また現場試験は外部の業者に丸投げである。

A    安全管理規程第1条の「感染研における病原体等に起因して発生する曝露及び感染症法に基づく事故の未然防止を図ること」という目的を達成するために設けられた4つの委員会(同第7条)がキャビネット、HEPAフィルタの管理(技術基準を含む)について無関心でありかつ必要な知見を有していない。

B    建築、建築設備、実験機器・器具類の経年劣化が進んでいる。



つまり、感染研において、「責任ある管理」は行われておらず、周辺の住民は基準に基づく性能が確認されないHEPAフィルタを通過した実験室排気を一年中、「再利用」させられてきたことになる。

 

3.BSL4施設を発生源とする甚大なバイオハザードの可能性がある

 

こうした現況の杜撰な管理が放置されたまま、さらに原発と同様の根拠のない「安全神話」

に依拠したまま、BSL4施設を稼働すれば、BSL4施設を発生源とする取り返しのつ

かない甚大なバイオハザードを周辺にもたらす可能性がある。

 

4.エボラ出血熱の診断は、BSL3施設以下で実施できる検査体制が確立している。

BSL4施設稼働とエボラ出血熱の早期診断、侵入防止は直接の関係はない。

 

一方、エボラ出血熱を含むBSL4病原体による感染症の診断は、BSL3以下の施設で実施できる検査体制がすでに確立されている。

侵入を阻止する柱は侵入門戸での検疫であり、BSL4施設の稼働と病原体の侵入防御とは直接関係ないものである。侵入門戸にある検疫施設に病院機能も併設させるなど侵入阻止のための総合的な体制こそ肝要である。

ということはBSL4施設稼働の目的は、早期診断や侵入防止とは関係のない基礎研究を行うことに他ならない。

5.BSL4病原体の基礎研究は、流行現地で国際的な協力の下に実施されるべき

 

 結局、BSL4施設稼働の目的は、BSL4病原体を生きたまま(増殖しうる状態で)施設内に持ち込み、増殖実験、動物感染実験、遺伝子組換え実験等々の各種実験を日常的に行うためであることに他ならない。本来、BSL4病原体の基礎研究は、流行現地で国際的な協力の下に実施されるべきと考える。世界各国に生きたBSL4病原体を移送して実験研究をすることはかえってバイオハザード発生の機会を増加させ、バイオテロの可能性も危惧される。

 

6.日本学術会議は自らの提言を見直し、再検討すべき

 

日本学術会議は2014320日付の提言「我が国のバイオセーフティレベル4(BSL-4)施設の必要性について」で、BSL4施設の建設、稼働を求めているが、バイオ施設の立地条件の重要性、住民が異議申し立てを行ってきた理由、感染症法の課題などについてあまりにも無知・無関心な内容である。当センターは2014828日付け意見書で詳細に反論し、提言の見直し再検討を求めた。

意見書の詳細は当センターホームページ(http://www.biohazards.jp/)を参照いただきたい。

以上

 

 


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