人為的ミスは起きるものー生物封じ込め実験施設での事故と安全規則違反

責任ある遺伝学協会、2005

(長島 功訳)

 

序 論

毎日、米国では数千もの実験室で、潜在的な危険性を有するウィルス、細菌や他の病原性微生物が扱われている。研究者と公衆の安全確保のために、必要な設備、実験慣行、施設の設計や他の対策に関する指針が定められている。しかし、すべてのバイオセーフティ・レベル―普通の基準実験室の最低限の封じ込めから高度安全施設の気密ボックス、全身のボディースーツや吸排気電気掃除機に至るまで―において事故は避けられない。

 

責任ある遺伝学協会は、ここ10年間に発生した生物系高度安全研究施設での事故や安全の崩壊に関する調査を行った。この調査結果には次の事故の各例が含まれている。

 

     生物封じ込め実験施設に貯蔵されているバイオテロに使用可能な生物学的因子(病原体等の生物物質―訳者)の相当量の紛失(または所在不明)

     重病や死を招く危険な病原体への実験施設職員の感染

     安全検査後の施錠安全対策や封じ込め対策の機能不全または停電

     生物封じ込め施設から持ち出されたバイオテロに使用可能な生物学的因子を市民への無差別的危害を引き起こすために利用すること

 

1990年代後半以来、生物学的防衛研究のための資金供給額の急増によって、炭疽菌、ペスト、エボラや野兎病をはじめとする世界で最も危険な病気のいくつかを扱うP3・P4施設が増加してきた。

 

多くの人は、P3・P4施設では事故はめったに起こらないと主張する。実際、実験室曝露・感染、安全規則違反や微生物学系・生物医学系実験施設からの環境への病原体の漏出の報告に関する連邦の包括的指針がない状況を考えると、このような事故がどのくらいの頻度で起きているかについては多くの人の間で論争となっている。

 

実験室事故の報告―関連する法律と指針

 

実験施設の職員の1人が、いくつかの指定された潜在的危険性を有する生物学的因子に感染したときには、その施設は州法によって直ちにその感染を報告する必要がある。米国疾病予防センター(CDC)は49の「届出を要する病気」のリストを保持しているが、保健当局に届出が必要な特殊な病気は州単位で決定される。CDCへの感染の報告は依然として義務である。ほとんどの州は、バイオテロに使用可能な生物学的因子を含め、公衆の健康への重大な脅威を引き起こす病気の迅速な報告を義務化する法律を施行した。

 

CDCが受け取る実験室感染の自発的な報告は、「死亡率・疾病率の週報」で公表されている。当協会の調査で、すべてではないが、ほとんどの重篤な実験室感染はCDCにより文書で公表されたが、職員の病原体への曝露はそれに比べてあまり文書化されていないことが明らかとなった。例えば、数回にわたる実験室内での炭疽菌曝露の後、CDCはその週報でその事故を公表しなかった。

 

他の部類の生物防衛研究所の事故―それには安全規則違反、生物物質の窃盗や環境への病原体の漏出が含まれる―は厳重に保護される秘密事項であり、それを公表するのは調査報道機関だけであるか、あるいはあまりないことだが、情報自由法(FOIA)による問い合わせを通じてだけである。

 

2002年の反バイオテロ法」によって、バイオテロに使用可能な生物学的因子の窃盗や紛失、ならびに生物学的因子の無資格者による取り扱いを防ぐために策定された特定場所のための安全対策に関連した情報の公表は禁止されている。実験施設からのバイオテロに使用可能な生物学的因子の漏出や窃盗を報告することは義務であるけれども、保健福祉省長官は、事故が公衆の健康に重大な緊急事態を引き起こした場合にだけ公表することができる。

 

出典

Mistakes happen:Accidents and Security Breaches at Biocontainment Laboratories

 (http://www.gene-watch.org/bubiodefense/pages/accidents.html)

 

 

 

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