《病原体・遺伝子組み換え実験施設(バイオ施設)への国際的・国内的規制の発展についての年表》

(芝田進午・編)



第1期:病原体実験施設にたいして無規制であるが、国際的・国内的に環境保全のための規制が強化されはじめた時期( -74年まで)

47-72
 予研で判明しただけで80件の感染事故発生

49
 バーミンガム大学関係の洗濯屋の従業員6名、訪問者1名がQ熱に感染

60/2
 予研で火災

60/3
 予研で火災

64
 政府、国立の試験研究機関の筑波研究学園都市への移転構想発表。その後、工業試験所、農業技術研究所、 食糧研究所等、国立試験研究機関のほとんどすべては移転した。しかし、予研が主導して厚生省の試験研究機関 は「交通が不便になる」などの理由で反対した(環境保全の見地が欠けていた)

65頃
 予研村山分室で爆発事故

67
 マールブルグ、フランクフルト、ベオグラードの研究施設でのちに謂うところのマールブルグウイルスによる感染事故が発生。未知の新しいウイルスの危険が問題になる

67
 EC理事会が「危険な物質の分類、包装、標示に関する法律、規制、行政措置についての指令」を採択

70
 アメリカで「国家環境政策法」(NEPA)発効。政府の機関(バイオ施設も含む)は環境影響評価を公表し、公衆の同意を得なければならなくなった

71
 予研等の厚生省の試験研究機関が筑波移転の厚生省決定を最終的に覆す

72
 国連人間環境会議開催(ストックホルム)。"Only One Earth"
(かけがいのない地球)のスローガンで、環境問題を全地球的にみる視点が確立

73
 ロンドン大学で天然痘ウイルスで4名感染(2名死亡)

73
 WHOが「環境衛生クライテリア」(EHC)計画を開始

73/2/14
 広島高裁、吉田町し尿ごみ処理場事件につき、住民が健康被害を受け居住地を生活の場として利用することが困難になる蓋然性が高い場合、公害差し止めを求めうると判決

73/3/20
 熊本地裁、熊本水俣病第1次判決で、特定原因物質の生成の予見不可能性を過失の要件としたチッソの主張にたいして、「住民を人体実験に供するもので不当だ」と排斥した

74
 OECDが「人類とその環境に対する化学物質の潜在的影響を市場に出す前にアセスすることの勧告」を採択

74
 この年までアメリカの研究所で3921件の所内感染事故発生(R.M. Pikeの調査)


第2期:遺伝子組み換えの危険性に対応する「自主的」規制では不十分だとして、周辺住民への感染・発がんの危険が憂慮され、自治体条例によるバイオ施設への規制がはじまる時期 (1975 - 83)

75
 アシロマ会議で遺伝子組み換え実験の科学者による一時的な自主的禁止が決議される

75
 過去30年間に欧米諸国で少なくとも5000件の実験室感染事故発生、うち3分の1は「物理的封じ込め施設」で発生(J.リフキンの報告)

75
 ロンドン衛生・熱帯医学校で天然痘ウイルス漏出、所員1名、所員外2名死亡

75/2/27
 熊本地裁、牛深し尿処理場事件について、被害の恐れがある場合、環境影響評価がなされていない理由で、差止認容

75〜82/3
 仙台、和歌山、新潟、札幌、神戸、大阪、愛媛、名古屋等の大学の27研究施設でラットの腎症候出血熱ウイルスに144名感染事故(死亡1名)発生

76
 フォートデトリックで過去25年間に423件の感染事故(うち3名死亡)発生と報告

76
 フィラデルフィアのホテルでの在郷軍人集会で、182名発病 (うち19 名死亡)、周辺住民ら39名発病(うち5名死亡)。 肺炎症状のレジオネーラ菌が空調をつうじて感染。「在郷軍人病」 「シックビル症候群」とよばれる

76
 アトランタのCDCでロッキー山紅斑熱リケッチアで2名死亡

76
 国際有害化学物質登録制度(IRPTC)が設置

76/6/23
 アメリカのNIH、「組み換えDNA実験指針」を発表。その遵守を条件に遺伝子組み換えが解禁になる。しかし、指針は「倫理的・自主的」規制にすぎない

77
 中国のバイオ施設からインフルエンザウイルスが漏出

77
 米ケンブリッジ市でバイオ規制条例。ニューヨーク州、メリーランド州、プリンストン市、 サンジエゴ市等でも条例制定

77
 OECDが「人に対する化学物質の影響を予測する手続きと要件の指針」を採択

78/6
 宮城県沖地震で東北大で火災、実験動物997匹が逃走

78/8
 バーミンガム大学で天然痘ウイルス漏出、実験に関係のない人1名死亡、担当研究者自殺

79/4-5
 ソ連・スヴェルドロフスク市の実験施設からの炭疽菌の漏出、そのエーロゾルにより、で風下4キロにわたり110名が感染、住民66名死亡、50キロにわたり家畜被害の生物災害の大惨事が発生。これらの被害は死亡したから判明した。同惨事は、病原体施設に起因する周辺住民の不顕性感染があるが、判らない場合があること、病原体施設は人口密集地に設置されてはならないことを示す。他に、70年代ないし80年代にモスクワ市の獣医学研究所からブルセラ菌が漏出、隣接の学校で15名が死亡したが、時期は報道されていない。その後、モスクワ市からバイオ施設撤去

79
 予研が住民、障害者団体、早大、新宿区等の合意もなく、戸山への移転を決定

79/3/22
 松山地裁宇和島支部、住民に損害の蓋然性が高いとして、ごみ焼却場建設差し止め仮処分判決。建設計画にあたり、環境影響評価等、事前に十分に調査し、建築場所の適地性が他より優れていることを確認して選定すべきだとした

79/3
 文部省が「組換えDNA実験指針」を告示

79/8
 科学技術庁が「組換えDNA実験指針」を告示

80/6/6
 市川定夫「激発する放射性同位元素事故」(『朝日ジャーナル』)がバイオ施設等の管理の放漫を批判

80
 カリフォルニア州立大でウイルス紛失事故

80
 神奈川県環境影響評価条例(研究所にも環境影響評価が必要)

80年代〜90年代始め
 早大文学部教員のうち、在職者のがん死亡が続発するが、のち、その研究室に栄養研究所の排気が吹き付けていたので、それが原因だという疑惑が後に発生

81
 ケンブリッジ市バイオ規制条例、より厳しく改正。ボストン市も厳しい条例。同年まで7州等で条例
             
81/9
 フォートデトリックから世界中が感染するほどのチクングニヤウイルスが紛失

81/10
 筑波の理研P4実験施設の着工強行(ただし、病原体を扱わないと理研は公約した)

81/12
 武蔵村山市議会、予研村山分室でのP4建設・P3実験に抗議。厚生省、「住民の合意が得られていない」という理由を認め、P4実験施設稼働の中止を決定
            
82
 米で病原性大腸菌O-157による感染発生(後、遺伝子組み換えによる発生であり、実験施設からの漏出だという説が有力に)


第3期:WHOが病原体実験施設の安全対策の国際的な最低基準を制定し、バイオ施設の政府機関への登録を求め、また自治体、住民がバイオ施設への規制を強化する時期 (1983 - 90)

83
 WHO, Laboratory Biosafety Manual(「病原体実験施設安全対策必携」発行(P1/P2実験室の安全対策必携を指示するとともに、P3実験室からの排気を「人のいる建物」に流していけない、P3実験室は政府に登録しなければならない等を規制)予研の北村敬室長、同文書の策定に参加するが、法的規制の必要の政府への提言を懈怠

83
 リフキン、組み換え微生物の環境への放出差し止め提訴し、翌年勝訴

83
 実験動物施設基準研究会編『実験動物施設の建築および設備』(清至書院)が実験動物施設の立地条件として住居専用地域を避けるべきだと提言
                
83/4
 日野茂男「空気の流れとエアロゾル」『メディシナ』20巻4号。HEPAフィルター に欠陥品が多いと警告
    
84/8
 日野茂男「安全キャビネットと現場試験」『空気清浄』22巻1号。HEPAフィルター に欠陥品が多く、テストもできないと警告

85
 リフキン(首府ワシントンに居住)が、数千キロ離れたユタ州砂漠でのP4施設建設差し止めを提訴し、勝訴

85
 サンフランシスコ市民、カリフォルニア大学P2施設差し止めを提訴。 後、87年、環境影響評価をしない同施設差し止め訴訟勝訴判決。米国で環境影響評価報告を行わないバイオ施設への差止の判例が確立
             
85
 イギリスのスタフォード病院でシックビル症候群で158人発症(36名死亡)

86
 アメリカの研究者、アルゼンチンで遺伝子組み換えによる狂犬病ワクチンを無許可で投与、野外実験、1年後、感染者がでる

86
 モンタナ州立大学で研究者が遺伝子組み換え細菌を無許可で自然界に放出していたことが判明

86/7/17
 『毎日新聞』が「バイオ研究者次々がんに、因果関係めぐり議論」の記事で、パスツール研究所での発がん多発を報道。周辺でも発がん原因が吸入させられる危険を示唆
     
86/8/31
 『朝日新聞』が「バイオ研究に未知の危険、9人発がん、5人死亡」の見出しでパスツール研究所での発癌の危険を報道
 
86/9/24
 『朝日新聞』が「米軍研究所からウイルス紛失、環境保護団体が法廷に文書、『世界中が感染する量』の学者」の見出しで、バイオ施設の危険を警告
    
87/1
 予研の「安全性」が問題になり、移転反対運動になる

87/3/24
 『日本経済新聞』が「放射能汚染作業衣、管理区域外に出る、理研で管理ミス」の見出しで実験施設の危険管理を警告
 
87/4
 オーストラリアP4施設でニューカッスルウイルス漏出(研究者感染)、奇跡的に感染拡大せず

87/5
 スタンフォード大学(パロアルト)のバイオ施設に反対の住民運動、建設延期

87/6/23
 大阪市長、吹田市長、住宅地のバイオ施設で病原体を扱わないと協定書で住民に確認

87/7
 新宿区議会予研P3建設中止請願を全会一致で採択

87/9/26
 予研でメタノールの爆発事故、1名重傷

87
 三重大学医学部で劇症B型肝炎ウイルス感染事故、医師2名、看護婦1名死亡

87
 同じ頃、東京女子医大で劇症B型肝炎ウイルス感染事故、看護婦2名死亡

87
 理化学研究所P4施設で遠心分離器の事故

87
 アメリカでエイズの実験室内感染事故発生、2名感染

88
 科研製薬、龍ヶ崎市でのバイオ施設設置計画に住民が反対し、設置中止

88
 米政府、ユタ州の砂漠に予定のP4施設建設断念。P3にレベルダウンし、環境影響評価を発表して、建設にこぎつける

88/4
 つくば市の理研のP4実験(理研では病原体を扱わない前提)に差し止め提訴

88/4
 ロンドンBBC本部でシックビル症候群で100人以上感染(1人死亡)

88/7
 予研、着工強行を通告。区議会、着工強行反対を申し入れ

88/7
 米上院政府管理監察委員会が、バイオ施設(フォートデトリック、エール大学医学部)の安全対策の不十分さについて公聴会を開催し、バイオ施設の危険性について世論に警告

88/8
 芝田編『生命を守る方法』出版

88/11/14
 予研所長、早大宛文書で「研究機関の地域社会に対する関係の在り方が問われる時代になった」「地域との関連において研究の内容やその意義が点検され、理解と協力を得ながら研究所が運営されるべきだ」と言明
               
88/11/15
  「恵庭リサーチビジネスパーク」、病原体の遺伝子組み換えを行わないと確認
                     
88/11/25
 都留重人ら、74名、「予研の移転計画の強行に反対し、生物災害予防の条件整備を提言する声明」
           
88/12/13
 予研、機動隊を投入し、住民・学生に暴力、建設強行。住民、早大、区議会が抗議。世界で最悪の立地に、最悪の方法で、最悪の欠陥施設を建設

89/1
 大磯町で昭和電工バイオ施設反対の住民運動始まる

89/3/22
 予研移転・実験差し止め提訴(予研裁判はじまる)

89/5/12
 予研で火災発生

89/6/28
 『毎日新聞』が、予研でP4レベルのラッサ熱ウイルスを含む血液の抗体検査をP2実験室で行ったこと、病原体検査規程がないのは問題だとと報道

89/7/14
  「かながわサイエンスパーク」が住民と「環境保全協定」を結び、バイオ実験・有害化学物質実験・放射性同位元素使用の実験をしないと公約
                       
89/7/25
 『毎日新聞』の「有機溶剤が大気汚染」の記事。予研は、住居専用地域に立地しながら大量の有機溶剤を使用し、大気中に排出している。有機溶剤のあるものには発がん性があるので、排出する排気の発がん性について測定も環境影響もしない予研は「予防衛生」を破壊するものであると報道

89/10/9
 都留重人、宮本憲一氏ら、大蔵大臣に予研建設費凍結、会計検査院長に厳重監査を求める要請書を提出

89/11/4
 江藤隆美運輸大臣が成田空港反対派の熱田派への回答書で住民にはじめて「陳謝」したと言明
             
89/11〜90/4
 予研筑波霊長類センターでサル水痘ウイルスに多数のサルが感染する事故が発生
                
89
 住宅都市整備公団「常総ニュータウンの施設用地分譲募集要項」で「バイオ施設はお断り」と条件を付ける

89
 日本建築学会編『実験動物施設の設計』(彰国社、pp. 1-59, 178-221)が実験動物施設の立地条件を規制
          

第4期: 国連、WHO、EC、先進諸国、環境庁、自治体等がバイオ施設への法的規制を強化する時期 (1990 - 97)

90年頃
 新宿のペンシルビルでシックビル症候群発生、約30人感染

90
 英国の「1990年環境保護法」、環境保全のために組み換え微生物の登録、情報の公開、査察制度を法制化

90/1
 芝田編『論争・生物災害を防ぐ方法』刊行

90/3/5
 環境庁、バイオ施設の新規立地の事前審査、住民合意、承諾の手続きが不明として、「バイオ関連施設環境保全対策分科会」設置。委員は推進側のみで、住民側を排除

90/4/23
 EC理事会「遺伝子組み換え微生物閉鎖系使用についての指令」で環境評価・危険度評価の公表、公衆合意が必要と指摘し、規制を強化
                       
90/6
 神奈川県「先端技術産業立地環境対策暫定指針」決定(環境影響評価の発表と住民合意を義務づけ、病原体の遺伝子組み換え実験を行わないよう指導)

90/7
 高槻市で日本たばこ産業の医薬総合研究所設置反対の住民運動始まる

90/7
 ドイツ「遺伝子工学の諸問題の規制のための法律」 施行。レベル2以上のバイオ施設の州政府への届出と州政府による査察と違反の場合の罰則が法制化

90/10/6
 英国保健安全局、裸のDNAには発がん性があり、エイズを扱うよりも危険だと警告(P. Brown論文、New Scientist, Oct. 6.1990)

90/10/15
 田畑忍ら、学識経験者、環境庁長官宛「バイオ関連施設環境保全対策分科会」への環境専門家、住民運動代表参加を要請
   
90/11/5
 米国「公法」一部改正、バイオ施設を規制。大多数のバイオ施設は、施設の所在地、扱う病原体の種類と危険度、保健所・消防署・警察との毎年の安全・災害対策の協議文書を国会に提出しなければならなくなった

90/12
 大磯町で昭和電工バイオ施設反対派が町長に当選、昭和電工、 移転中止

91/1/26
 『読売』が、予研筑波霊長類センターで89年11月から90年4月まで、サル水痘ウイルスで大感染事故が発生したと報道

91/6/26
 『週刊テーミス』が「驚愕レポート・シックビル症候群ついに日本上陸、アメリカでは死者続出」と報道。[密閉性が高い建物での病原体の発生と繁殖、その建物から発する有毒物質等の危険、その被害がすでに日本で発生していることを警告。[予研にあてはまる警告である。]
       
91/7/9
 国連環境開発会議(リオデジャネイロ)のための国連事務総長報告「バイオテクノロジーの環境に健全な管理」決定。公衆への情報公開を強調

91/8/16
 国連環境開発会議のための「国際環境法についてのハーグ会議の勧告」採択

91/9
 高槻市で日本たばこ産業が医薬品研究所の建設を強行

91/11/11
 リフキン氏、予研建設現場を視察し「世界最悪」と批判。早大で講演し、予研をきびしく批判

91/11/29
 予研品川庁舎周辺の8町会長らが「予研に排気・排煙を出させるな」と品川区長・区議会に陳情

91/12/3
 リフキンが芝田進午との対談「化学物質より深刻な遺伝子工学の環境破壊:生物災害に対応できない日本政府」(『エコノミスト』)で予研を批判
                  
91
 70ケ国以上が参加したUNEP専門家会議が、化学物質の環境に対する健全な管理の推進、IPCSの役割強化、化学的リスクアセスメントを提言

92/1
 早大総長、予研所長に「抗議書」送付。早大の「懸念と不安が一層強まっている」と建設工事の続行に抗議

92/2
 三重県衛生研究所(P3実験室)の水源地への移転反対の住民運動が発生

92/5
 『遺伝子組み換え・倫理情報サービス』(ドイツ語)92年5月号、S・ヘッセの予研批判論文を掲載
          
92/5/28
 予研移転先の住民、早大教職員ら、約2万5千名の「今再び、予研新宿移転に反対する署名」を厚相に提出。早大第1・第2文学部長、住民運動代表ら、衆参両院環境問題委員長にバイオ施設の法的規制の必要について陳情

92/6
 『遺伝子組み換え・倫理情報サービス』(ドイツ語)92年6月号、S・ハイムの予研批判論文を掲載
          
92/6
 国連環境開発会議準備委員会、「アジェンダ21」に含めるべき有害化学物質の環境に健全な管理に関する国際戦略を提言

92/6/14
 国連環境開発会議(リオデジャネイロ)開催。「アジェンダ21」(16章「バイ     オテクノロジーの環境に健全な管理」含む)を採択。バイオテクノロジーの安全管理が国際的で、情報が公開されなければならないないと強調

92/6/25
 早大第1・第2文学部長、予研所長に「猛省を促す」との同教授会声明を手交

92/8/20
 早大総長、予研移転開始通知への「抗議書」を予研所長に提出

92/8/27
 『ネーチャー』、スィンバンクス記者の記事「地域ならびに全国からの抗議にもかかわらず、日本の予研、移転を強行」と報道
                         
92/9/7
 予研、戸山へ移転強行。住民、早大が抗議。しばしば周辺で悪臭公害が発生

92/9/22
 東京女子医大実験動物施設で爆発事故

92/10/30
 新宿区長、予研所長にP3実験を行わないよう申し入れ

92/11
 千葉市工業団地での昭和電工バイオ施設建設計画への反対運動開始

92/12
 予研のP3実験強行に早大、住民等が抗議

92/12//23
 予研、人口密集地でP3実験開始を強行

92/12/24
 早大総長、P3実験開始「抗議書」を予研所長に提出

92/12/25
 予研裁判の会、P3実験開始「抗議書」を予研所長に提出。「事後に安全性を確認する」という予研は住民への人体実験だと糾弾

93
 WHO, Laboratory Biosafety Manual(『病原体実験施設安全対策必携』)、2版発行。病原体施設への規制が厳しくなり、予研が最低の国際基準に違反していることが後に判明
       
93
 ドイツのマールブルク大学バイオ施設に実験禁止命令

93/1/13
 『朝日新聞』(大阪版)が「京大医学部、走る衝撃」「実験用ネズミが伝染病」「見えぬ感染ルート」の見出しで、ラット多数と職員が腎症候性出血熱ウイルスに感染する事故が発生と報道。実験動物の危険性を示す。
             
93/2/1
 英国「遺伝子組み換え微生物(閉鎖系使用)規制の法律1992年」発効。レベル2以上のバイオ施設と実験計画のの政府機関「保健安全局」への届出義務、保健安全局による認可と査察、違反の場合の罰則制度が確立

93/3/25
 『ネーチャー』、芝田進午「予研のまちがった立地」を掲載
   
93/4/8
 新潟大医学部実験動物施設でラット160匹が腎症候出血熱ウイルスに感染する事故が発生した。『朝日』夕刊が報道
    
93/6〜7
 オウム真理教、亀戸の施設から周辺に炭疸菌を散布。病原体管理の無届け・無法状態への警告である
BR>93/7/23
 戸山研究庁舎の施設外でラット1匹発見。予研の実験動物杜撰管理への批判高まる

93/8
 芝田編『バイオ裁判』(原告訴状、準備書面等を収録)刊行

93/9/9
 『朝日新聞』夕刊が「死亡率の高い劇症溶連菌感染症、日本でも発生、7人死亡」の記事で、新しい病原体の危険を警告
 
93/11/5
 予研の施設外でマウス1匹発見。予研の実験動物杜撰管理への批判高まる

93/11
 早大文学部教員在職死亡死因の多くが発がんであり、その多くが栄養研究所の排気に起因するという疑惑が発生
  
93/12/17
 新宿区長、情報公開、実験動物への個体標識票貼付を予研所長に要求
                         
94
 この頃から、薬害エイズ、病原体の逆襲、ウイルスの逆襲等が大きな社会問題になる

94/1/18
 予研職員の在職・退職後死亡の9割以上ががんによるもので、発がん物質を扱っていることに関係があるとして『毎日』夕刊が報道。原告はそれらの発がん物質が排気として排出されることの危険性を示すものとして書証として提出
      
94/1/20
 R・F・カバズ、他「実験室員のサルエイズウイルス感染例」(『ニューイングランド医学雑誌』330巻3号、pp. 172-177)が、サルエイズウイルスはヒトに感染しないといわれてきたが、それを扱っていた実験者が感染した事実を確認。エーロゾルによる感染とみられ、エーロゾルの危険性をしめす
    
94/1/20
 『読売新聞』夕刊の「サルのエイズウイルス、研究所の職員に感染」と題する記事
 
94/2/4
 バーミンガム大学バイオ施設が実験中止命令を受けたと英国のマスコミが大きく報道

94/2
 日本弁護士連合会『ダイオキシン緊急提言』 予研を含む行政よりも弁護士連合会がダイオキシン排出禁止で先駆的だった例証である
                        
94/8/5
 新宿区長、住民合意なき実験を止めよと予研所長に申し入れ
 
94/9/1
 『ネーチャー』の論説「科学者と公衆の信頼」が安全対策のルーズな施設は閉鎖されても仕方がないと自治体が警告。エール大学の実験室で研究者が致死性のサビアウイルスの感染事故を起こしたのに報告せず、旅行にでかけていたことが判明した事件を批判。予研=感染研にとっても当てはまる
 
94/9/5
 『タイム』の「致死性ウイルスが漏出する」と題する記事。『ネーチャー』が警告したウイルス実験施設の危険を同じく扱ったもので、「この事故はこうした危険な病原体が米国では本当に慎重に扱われているのかという疑問を提起した」と警告している
                   
94/9/29
 新宿区議会満場一致で、住民合意のない実験停止、情報公開、実験動物への個体識別票の貼付等を予研に申し入れ
   
94/12
 千葉市緑区住民と昭和電工バイオ施設との「環境安全協定書」締結(千葉市環境衛生局長、立会人となる(模範的協定書である)。住宅地から数キロ離れた工業団地に立地し、しかも病原体を扱わないバイオ施設についてさえ、最低、このような環境保全協定が必要だというモデルとして重要である
       
94/12/27
 予研所長、P3実験施設の全面稼働を一方的に通告

95/1/17
 阪神大震災でバイオ施設で爆発・火災・施設破壊・水浸し・P3 施設の壁ひび割れ、ダクト破壊発生、住宅地の不適地性を実証
                        
95/1/23
 「ウイルスが狙っている」「かわいい猿には毒がある」(『アエラ』。[モービリウイルス、ハンタウイルス、サビアウイルス等の新しいウイルスの出現の脅威、ならびにサルが媒介し、それらをヒトに感染させる危険を警告する論文である

95/1/31
 『朝日新聞』(大阪版)の記事「阪神大震災震度7、神大研究室ピンチ」。神戸大学医学部、理学部等で、冷凍庫が壊れたと報道。予研の病原体保管の冷凍庫も壊れ、漏出する危険の警告である
                      
95/2/2
 『京都新聞』の記事「『耐震神話』崩れた今、原発、本当に大丈夫?」。原発の地震対策の安全神話に疑問を投げかけたもので、予研の安全神話にも当てはまる
            
95/2/10
 『朝日新聞』社説「『安全神話』はもうごめんだ」。阪神大震災で崩壊した「安全神話」とその責任を問うている。予研にもそのまま当てはまる警告である
             
95/2/15
 『東京新聞』(夕刊)の記事「危険いっぱい大学研究室、薬品こぼれ引火爆発」。神戸市内の大学薬学部、理学部等で化学物質が引火爆発した事実を報道。化学物質を保管する予研のような施設でも、爆発火災が発生する危険への警告である
   
95/3/20
 地下鉄サリン事件。この頃、地下鉄霞ケ関駅で、ボツリヌス菌散布のための噴霧器が発見。病原体の無届け・無法状態への警告である

95/4
 Third World Network, The Need for Greater Regulation and Control of Genetic Engineering(第3世界ネットワーク『遺伝子工学の規制と監督の強化の必要』)発表。 Mae-Wan Ho, V. Shiva, E. von Weizsaecker, S. Krimskyら、遺伝子組み換えの安全性を憂慮する世界の代表的科学者の声明である
     
95/4/14
 井上薫「吹田市遺伝子組換え施設規制条例の法律問題」(『ジュリスト』1064号)。水戸地裁の判事補によるバイオ施設への規制の必要についての論文で、裁判官による「遺伝子法学」の研究水準を示す。本件原告主張を支持する内容である
   
95/4/28
 最高裁判決「計画段階の情報公開を求める住民側の勝訴確定」の記事(『赤旗』による)。大阪・安威川ダム訴訟に関して、行政側に安易な『情報隠し』を戒め、情報公開により住民の行政参加の道を開く画期的な判断と評価されている。予研は、移転計画の情報も、環境影響評価も事前に住民、早稲田大学、新宿区に公開してこなかった。最高裁判決によっても予研の移転の違法性は明確になる。
               
95/5/7
 テレビ朝日、早稲田のオウムのアジトと予研の建物を放映、予研関係者から病原体がオウムに渡されたと示唆

95/6/13
 芝田進午「オウムで露呈した政府・国立予防衛生研究所の怠慢」『エコノミスト』。オウムが生物戦争のために病原体を培養・実験していた事実があるが、このこと自体を処罰する法律がない。わが国では、病原体施設について届け出義務も査察制度もなく、その立地・環境条件について無法状態にある。本件は、このような無法状態を容認するのか、しないのかを争点とする。オウム事件は、はからずも原告主張の正しさを証明している
               
95/7/31
 予研からハムスターらしき小動物が敷地外に逃走するのを住民が目撃。予研所長、説明と質問のための面会要求を拒否
  
95/7
 兵庫県立衛生研究所「阪神・淡路大震災―被害状況と対策」。同研究所が受けた被害を中心に、バイオ施設が大地震によっていかに破壊されるかについて詳細に説明。人口密集地に立地するバイオ施設の危険性への警告である

95/10
 「阪神・淡路大震災の記録」(『神戸市環境保健研究所報』23巻)。阪神大震災によりバイオ施設が大被害を受けた実例の報告である。これによっても、同研究所よりもはるかに大量かつ危険な病原体、有害化学物質、放射性物質、実験動物を扱う予研が人口密集地に立地する危険は明白である

95/11/25
 『毎日新聞』、日本では病原体施設を規制する法律がなく、オウムの病原体施設を規制できないこと(芝田が『エコノミスト』で問題提起したことと同じ内容)、この点で日本が後進国であることを報道
                  
96/2/21
 東京地裁八王子支部、日の出町ごみ処分場問題で公害防止に関するデータについて「住民全員に閲覧・謄写の権利がある」と判決
             
96/2/8
 『朝日新聞』の記事「専門家の『安全意識』も課題に。市民との『差』認める」。もんじゅのナトリウム漏れ事故に関わり、原子力安全委員会が原子力施設の「安全」と社会が求める「安全」との間に差があることを認識したと報道。橋本首相が「地元の同意がない限り、原子力行政は進められない」と言明したことも報道。

96/2/28
 参議院環境特別委員会で、環境庁長官がわが国のバイオ施設への法的規制が無法状態で、予研の立地が問題であること、バイオ施設への法的規制の必要を認め、被告「国」自体の環境行政の責任者の意見は原告と同じになった。次のように発言した。
@戸山の予研が問題だと発言し「何かこっち[行政]が裁判所で、こっちは何をやっても裁判所から文句を言われない限りは大丈夫だと、こういう議論になってはいけない」。
A以前から[国会議員として]予研について厚生省に「いろんな意味でお願いをしたり、意見を申し上げてきた」。その立場で環境庁長官という立場で「注目してまいりたい」。
B阪神大震災で何らかの対応をしなければならない、「余り悠長なことを言っておられないのかなという実感を持つ」。
C環境庁として国内の病原体施設、バイオ施設の所在、数、実態等を把握できる状態になっていない。
D欧米ではバイオ施設について環境影響評価ないし審査手続きが行われている。
                  
96/3
 慶応大学病院で乳児13人、レジオネーラ菌にに感染、1人死亡

96/4/3
 『ダイオキシン速報』(9号)の「ダイオキシン対策を本格化、環境庁が総合戦略作りへ」の記事。環境庁がダイオキシン対策を策定していたのに、予研は住居専用地域で平然と焼却炉を使用し、ダイオキシンを排出しつづけた
           
96/5/10
 吹田市古江台連合自治協議会、大阪市、吹田市、生物分子工学研究所の「生物分子工学研究所設置に係わる協定書の概要」(同日付発表)「P3・P4レベルの実験、病毒・病原を対象とした研究を行わない」と協定
 
96/7
 Third World Network, Biosafety (第3世界ネットワーク『バイオセーフティ』)発表。 Mae-Wan Ho, V. Shiva, R. Kollekら遺伝子組み換えの安全性を憂慮する世界の代表的科学者が共同執筆
                      
96/8/25
 吉川昌之介「抗生物質過信のツケで細菌が逆襲」『週刊朝日緊急増刊』。O-157が遺伝子組み換えで発生した可能性を認める

96/9
 根路銘国昭「O-157とウイルス大流行病時代」(『文芸春秋』96/9月号)。O-157の発生が「遺伝子工学による人為説もある」と認める。遺伝子組み換えによる病原体が病原体施設から漏出し、宿主になりうる動物・人間を媒介して全世界に蔓延した可能性を認める結果になっている
          
96/10/3
 天笠啓祐「大腸菌O-157とは?―突然の災禍を示した生物災害の危険性」『早稲田大学新聞』。O-157が遺伝子組み換えで発生した可能性を認め、生物災害の恐怖を指摘
      
96/10/3
 『毎日新聞』の「ダイオキシン一定濃度超でごみ焼却場、廃止も、厚生省報告」の記事。ごみ焼却炉をもつ施設からのダイキシン排出は、環境庁、厚生省、日本弁護士会も早急な対策を求め、国民的世論になっていたが、予研は「予防衛生」研究所でありながら、住居専用地域で焼却炉を使用しつづけ、排煙中のダイオキシンを測定せず、環境影響もしなかった
  
96/10
 日本たばこ産業(株)のバイオ施設に関する情報公開を求めて住民代表の二木崇氏、高槻市を相手取り、大阪地裁に提訴

96
 R・M・ヘニング『ウイルスの反乱』(原著は93年。青土社)出版。一流科学ジャーナリストが一流ウイルス学者の協力で書いた新著。原告主張を支持するために書かれたかのようであり、次のように主張している。
@実験室の条件で新しいウイルスを扱うと、研究者、ついで地域全体が異様なウイルスの危険にさらされる可能性がある(p.44)。
A実験施設、培養器、実験動物という特殊環境のなかでウイルスが突然変異する場合があり、既知の危険度分類基準で予想できないものになる危険がある(pp.92-93)。
Bウイルスの培養自体が、危険な新系統を作り出す警告がある(p.154)。
C実験施設から病原体が漏出した事例がある(p.246)
D研究施設は社会不安を起こす場所に設置されてはならない。科学者と自治体責任者は、社会一般を不安に陥れてはならない。漏出の事故が起きれば、地域社会は予測もつかない危険に直面する(p.161)。
                

第5期:WHOがバイオ施設の立地・環境条件についての規制を発表し、国際社会の主張が原告の主張と同じになり、予研=感染研が国際的・国内的に決定的に孤立する時期(1997-)

97/1
 WHO, Safety in Health-care Laboratories (『保健関係実験施設の安全性』) 病原体実験施設は住宅地、公共施設、主要道路から離れて立地すべきだと規制
             
97/6/18
 訴訟審理の一環として、原告推薦のコリンズ、ケネディによる、また被告推薦のオビアット、リッチモンドによる感染研の国際査察が行われる

97/8/28
 原告、コリンズ・ケネディ「査察鑑定書」(本論は97/7/11付、補論は98/8/19付)を法廷に提出
             
97/9/10
 被告、オビアット・リッチモンド名義「報告書」を締切日より12日遅れて法廷に提出(日付がなく、後に署名が偽造であったことが判明)
                    
97/10/13
 東京地裁、原告、被告の会議で、被告は、オビアット・リッチモンド名義「報告書」提出が遅れたのは郵便が遅れたためだと虚言

97/12/11
 原告、コリンズ・ケネディによるオビアット・リッチモンド名義「報告書」への批判の「意見書」(97/10/9)を法廷に提出(その後、オビアット・リッチモンドは反論できず)
      
97/8-9
 岩垂寿喜男「バイオ時代の環境問題」(『技術と人間』) 元環境庁長官が感染研訴訟原告と同じ主張を述べたものである
   
98/5
 WHO「世界保健宣言」を採択。WHOの政策における人権の重視を強調。換言すれば、人権を無視する感染症研究を非難〔紹介『科学1998年9月号』〕
              
98/6/19
 オビアット・リッチモンド「報告書」の署名が偽造であったので、原告らは感染研責任者を私文書偽造、偽造私文書行使の犯罪で東京地検に告発
                  
98/9/8
 通産相の諮問機関である化学品審議会の安全対策・リスク管理部会、企業ごとに化学物質の排出量を報告するよう企業に義務づけ、国がそれを公表する「化学物質排出量・移動量登録制度」(PRTR)の法制化を提言

98/10/2
 被告、オビアット・リッチモンド名義「報告書」(「本物の署名」らしいが、日付の記入がない欠陥文書である)とオビアット・リッチモンドの手紙を「書証」として東京地裁に提出。オビアット・リッチモンド名義報告書が、彼らの「報告書」が感染研によって作成・印刷され、彼らの「署名を得る」必要があったので「署名の模写」を許可したこと、つまり彼らと感染研が共謀して、法廷・原告を瞞着したと認める
 
98/10/9
 『サイエンス』誌、感染研裁判について大きく報道
                                
98/11/20
 最高裁、日の出町ごみ処分場問題で「周辺住民にはすべての資料を閲覧する権利がある」と判決
   
98/11/20
 『サイエンス』誌、感染研査察についてのコリンズ、ケネディ両博士の論評を掲載
                  
98/11/27
 芝田進午原告代表が、オビアット・リッチモンド名義「報告書」が「書証」から排除されるべきだと論証
      


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