新型インフルエンザ問題に関する見解

2009220

                         バイオハザード予防市民センター

 

●根拠の希薄なパンデミック報道

 「いつ起こってもおかしくない」「待ったなしでやってくる」との触れ込みで、国立感染症研究所などによる新型インフルエンザ発生「予測」がまかり通っている。それに輪をかけて、マスメディアによる恐怖報道が過熱し、国民を異常な不安に陥れている。専門家らによる不用意な言動がマスコミを刺激し、さらに誇張され報道されるのは必然の帰結である。今日取り沙汰されているH51ウイルスから新型が起こるかどうかは不明であり、たとえ起こるとしても、まだ多くのプロセスがある。たとえば、東南アジアなどで起きているトリ型ウイルスの人への感染は、例えるならば、鳥と濃密な接触を持つ人々の細胞周辺にウイルスが密集した結果、ウイルスが鍵穴を強引にこじ開けて侵入した状況に等しいと言われる。ミクロの細胞の傷から侵入することも考えられる。現状では人から人感染への遺伝子変化には、程遠い状況とみるのが妥当のようだ。これらを現代科学に基づき、冷静に多方面から分析するならば、自ずと新型ウイルス対策が導き出されるはずである。しきりに宣伝されているように、過去に起こった強毒性ウイルスの被害事例と、次に予測される新型の被害を同列に取り扱うこと自体が、時代的変化の無視と相対的価値判断の欠如の非科学の産物といわざるを得ない。多くのステップを飛び越していきなり結果論ばかりを弄ぶのは、いつ、何事においてもパニックをもたらす以外の何物でもない。

●時代錯誤の新型論

 パンデミック報道で、必ず始めに出てくるのが、一世紀近く前のスペインカゼである。このときの状況を知ることは重要だが、そのことを今日そのまま当て嵌めていること、それどころか、もっと危険だとも言う。まことに驚くべき時代錯誤というほかない。専門家には、負の側面ばかりをことさら強調する人が多いため、こんな非常識がまかり通るのであろう。こんなことでは現代にマッチしたまともな対応が出来るはずがない。少し長くなるが、新型発生の背景に言及する必要があろう。

スペイン風邪は、ウイルスについて何もわかっていなかった時代の出来事である。よって、成り行き任せの状況だった。具体的には、この風邪がヨーロッパで猛威を振るう前に、中国で流行していたことが明らかになっている。それがヨーロッパにパンデミックをもたらした謎解きの鍵は、第一次世界大戦だった。働き盛りの若者を大量に戦線に送っていたヨーロッパ諸国は、深刻な労働力不足に陥っていた。そこで中国労働者が出稼ぎとして上海や香港から大量に船でヨーロッパに運ばれていた。密閉された長い船旅の中で、まず風邪が蔓延した。いわば巨大なインキュベーターである。彼らはまず、イギリスの港に運ばれた模様だ。そこで兵士達に感染した。その兵士らは海を渡ってヨーロッパの戦場に送られた。そして戦線全体に拡がり、ヨーロッパ全土を覆っていった。そこから全世界へと拡がっていった。

 こういう事態になるまで対策らしきものが行われなかった。アメリカでも大流行したが、最初のうちは普通の風邪くらいに考えていたが、20歳から40歳の人々が大勢死亡する事態に直面し、人々の接触を制限するなどの対策にのり出したが、時すでに遅かった。

 以上を考えると、インフルエンザ・パンデミック発生のメカニズムが見えてくる。まずウイルスと人との巨大な接触空間と時間。次に、未知の病原体の正体がまるで分からずに行われた世界的規模の人間輸送。そして、各国における膨大な人々の接触である。これらによって、ウイルスの毒力が強まったとみるべきであろう。その条件が完全に満たされていたのがスペインカゼ発生の場合と思われる。

 ともあれ、新型インフルエンザは、特殊な歴史的、地理的、社会的環境で発生することが推認される。これまでの新型発生の背景には、政治・社会・生活環境など悪条件が揃い過ぎていたことが覗えるのである。

 

●製薬企業と医療側の経営戦略に翻弄される新型対策 

欧米を中心とする今日の医学は、西洋医学、またの名を「臓器別医学」と呼ばれている。病名のつけられたその臓器ばかりに目が奪われる医療のことだ。感染症の場合は、専らその病原菌、ウイルスを標的とした医療が徹底して行なわれる。言うまでもなくそのほとんどは、薬とワクチンである。欧米仕立ての巨利をつかむための医学の経済論理が、今、わが国でも罷り通っている。その結果が今日の徹底した薬漬け医療であり、あちこちで矛盾が噴き出している。

インフルエンザ薬タミフル(スイス・ロシュ社製、日本の発売元・中外製薬)は、重大な異常行動死や、突然死事故、死への恐怖体験などを引き起こしてきたことは、今や公然の秘密である。脳細胞にも存在するノイラミニダーゼ酵素の阻害を引き起こす「分子標的薬」としての危険性が現実のものとなっている。こうした流れの中で、タミフルの副作用を調査する厚労省の研究班ならびにその協力者らに、中外製薬から多額の資金が提供されていたことが明らかとなったが、その責任者が変わっただけで責任の所在は闇に葬られたままだ。大手製薬企業とそれを支える研究者らの、なりふり構わぬ圧力によって国の医薬行政が大きく歪められている。

インフルエンザワクチンは、流行株と不適合であれば、効果は認められないことや、数々の副作用被害などがずっと指摘されてきた。以上のような事実にもかかわらず、欧米ならびに日本の製薬企業が作るタミフルとワクチンに、国民を総動員した上で、新型に対して大量備蓄を推進しているのが、わが国の現実の姿である。

●ワクチン・タミフル至上主義の誤り

現在、国はH51型プレパンデミックワクチン3000万人分と、タミフル・リレンザは人口比45割に当たる4000万〜5000万人分の大量備蓄方針を決めている。

プレパンデミックワクチンについては、過去のアメリカでの副作用事故の教訓や、どのウイルスから新型が生まれるのかが分からないことなどから、ワクチン推進派の専門家の間でも賛否両論が渦まいている。現に接種が行われている段階ですでに、接種後の注射部位の異常が66%、頭痛・発熱などの体調不良者が、28%にも上っている。新型が発生するのかどうか、被害がどのくらいになるのか、ワクチンの効果がどれくらいあるのかなど、いずれも推測の域を出ていない。これらに莫大な予算を計上しているのが実情である。また最近、変異しやすいウイルスの表面構造ではなく、変異しにくい内部たんぱく質をもとにしたワクチンが感染症研究所などの研究チームによって開発されたことが報じられた。不安定な現行ワクチンの大量備蓄の矛盾がここでも露呈した。

タミフルは、厚労省研究班によっておこなわれた調査によって「異常行動との関係が認められない」とされた。ところがその後、このデータを解析した同省調査会は、「データベースから一部別のデータが引き出されたことによる解析ミスがあった」ことを認めた。NPO法人医薬ビジランスセンターの浜六郎氏は、研究班の用いたデータを詳細に分析し、「厚労省研究班は、タミフル服用群に起きていた異常行動を、タミフル非服用群に編入するなどのテクニックで、非服用群の異常行動を多く見せる操作を行っていた」ことを具体的に明らかにした。これとは別に、耐性ウイルスの拡がりが大きな問題に発展している。厚労省調査でも97%の患者で今冬流行のAソ連型に効かなかったなどの報告が出ている。

以上述べたことは、ウイルスという病原体をワクチンとタミフルによって攻撃することを至上とする今日のインフルエンザ対策が、いわゆるEBM(Evidence Based Medicine) とは程遠いものであることを、如実に示している。

●無責任でおざなりの自然治癒対策を根本から見直せ

 風邪の季節に必ず登場する自然予防対策は、「うがい、手洗いをこまめにやろう・・・などが主体である。このような日常の生活習慣ばかりを取り上げ、少しアレンジしつつ、進歩のないうたい文句を何十年となく繰り返してきた。まことに不可解であり、国民を愚弄するものと言うほかない。当センターは、今日のインフルエンザ対策の批判だけを目的とするものではなく、体にやさしく、安全で、安上がりの合理的かつ具体性のある予防対策を訴え続けてきた。実際に風邪(インフルエンザを含む)が進みやすい時間帯の調査を実施した。その結果、夜中の時間帯に行なう「ぬれマスク法」や「予防嚥下法」などが効果的であることが判明した(臼田篤伸『かぜ症候群における咀嚼と嚥下の役割』日本プライマリ・ケア学会誌211号、1998年)。また従来からある市販の風邪薬を、引き始めにすぐ家で飲むことによって、軽く治められる。自分に合った薬を常備しておくことにより、副作用の不安もなく、病院に慌てていく必要がなくなるのである。効果も怪しい上に危険と隣り合わせのワクチン・タミフルで、国民を病院に総動員する前に、本当にやるべきことは何なのかが、今厳しく問われているといわざるを得ない。

●発生源対策と水際作戦を優先課題とすることが急務

 ワクチンとタミフルを大量備蓄する目標数値だけが先行し、新型の感染被害を最少限に抑えるための総合的な議論がほとんどなされていないのが現状である。

今日の情報、通信、交通手段の進歩は、最新の情報を瞬時にもたらし、適切な対策を素早く実行できる条件を与えている。ところが、ワクチン・タミフル至上論者は、これを逆手にとって、根拠の希薄なパンデミック脅威論にすり替えている。「国内に侵入したら、あっというまに拡大する」「触れれば全身感染し、数日のうちに死に至る」などの論法が根強い。航空機を始めとする輸送機関の高速化で、たちどころに世界中に広がるともいう。

効果が不確かな上に副作用の危険性、莫大な経費と人員の確保を要するワクチン・タミフル至上論よりも先に議論すべきことがある。それが、海外発生から国内侵入に至るプロセスでの初期封じ込め対策である。これが水際作戦とも呼ばれるものであり、次のような対策が想定される。出入国時の検疫の強化、国内侵入初期の全国各地における少数患者の発生の監視、患者の隔離などの的確な感染拡大の防止、患者との接触者の追跡調査、予防対策などが挙げられる。仮に、感染が広がる気配を見せた場合には、その地域で、大勢の人の集会などの制限が自ずと必要となる。ちなみに、スペインカゼ当時、アメリカでは、感染拡大の兆候が見えたときに、イベント会場や劇場などを対象に、イベントを中止したり、大勢の人の集合場所を、早期に閉鎖した都市では被害が軽微であったのに対して、しなかった都市では、膨大な犠牲者を出したことが知られている。

新たな海外における新型発生時には、わが国として、必要に応じて専門家等を現地に派遣するとともに、十分な医薬品を提供し、速やかに適切な検査・医療が受けられるように協力しなければならない。患者の救済とともに、感染拡大阻止に最大限の努力をすることが何よりも重要である。そこではまた、日本へ向かう乗客の検疫も厳格に実施されるのは言うまでもない。

これらの対策をきちんとできる状態にしておいて、副作用を最少限に抑えられることを国民に情報公開した上で、ワクチンあるいは、新薬を補完的に準備する方策を立てるべきである。これらを前提として、最新の医学が、それぞれの状況にどのように役立てられるかを医療関係者が真剣に協議していくことが求められる。様々な問題を抱えたワクチン・タミフルを、それも何千万という単位で備蓄することにばかりに目が眩んでいる今の新型インフルエンザ対策は、根本から改めることが必要である。

なお、今日の状況下では、世界的に存在する劣悪な生活環境を改善すること、貧困の絶滅(とくにホームレスの人々の救済)、失業者対策などが、インフルエンザ流行予防の重要条件として考慮されなければならない。これらによって、人々が、十分な休養をとり、必要な医療が受けられ、体調が整えられることによって、インフルエンザの流行の拡大防止につながっていくものとなることを付言する。

 

以上、バイオハザード予防市民センターは、新型インフルエンザ問題に関する見解を表明する。