国立感染症研究所訴訟


2審も住民側敗訴


東京高裁「実験、実情は公開を」


 東京都新宿区戸山の「国立感染症研究所」を巡り、付近の住民ら163人が国に危険な病原体を使った実験の差し止めなどを求めた訴訟で、東京高裁は29日、東京地裁判決(01年3月)に続き住民側の請求を棄却した。大藤敏裁判長は「病原体が漏れて住民らに感染する具体的危険性があるとまでは認められない」と指摘した。

 ただ、同研究所がこれまで付近住民に十分な情報公開を行わなかった実態を踏まえ、「実情を情報公開し、住民らの理解と協力を得る必要がある」と付言した。

 判決によると、住民側は「研究所の安全性に疑問があり、日常的不安を余儀なくされ、人格権を侵害されている」として@病原体の保管や研究A遺伝子組み換え実験B排気や排水ーなどの差し止めを求めた。

 判決はまず研究所の危険性について「抽象的、一般的な危険性にとどまる」と判断した。そのうえで「研究所の公共性や公益性を考慮すれば、危険性は受忍限度の範囲内」と結論づけた。

 ただ、いったん被害が発生すれば取り返しがつかない事態に発展することを踏まえ「危険が絶対発生しないよう、万全の対策を講じるべきだ」とし注文を付けた。

 この訴訟は、反核運動や薬害エイズの責任追及などに携わった故芝田進午広島大名誉教授が原告代表を務め、付近住民や早稲田大学関係者らが加わって89〜00年、19次にわたって提訴した。住民側の島田修一弁護士は「非常に残念。上告することになると思う」と話した。【小林直】
(毎日新聞 2003年9月29日夕刊)

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