病原体の杜撰な管理と隠蔽工作で、

産業技術総合研究所に抗議と質問状手交

 

            つくば環境と人権のための市民会議

              代表 中嶋スミ子

 

071017日の朝日新聞朝刊一面トップと社会面及び読売新聞の電子版で大きく取り上げられた産総研(経済産業省所管の独立行政法人、産業技術総合研究所)に於ける危険な病原体の杜撰な管理とその隠蔽工作に関する記事を読み全く信じがたい思いであった。

 

産総研といえば、旧通産省時代には工業技術院と呼ばれていてエリート研究者の集まっている日本有数の研究機関である。東京本部、つくば本部の他北海道から九州まで8つのセンターを持ち、ライフサイエンス分野、情報通信、エレクトロニクス分野、ナノテクノロジー、材料、製造分野、環境、エネルギー分野、地質分野、標準、計測分野等幅広い分野で基礎研究から製品化までの本格的な研究を目ざしている、研究職、事務職をあわせて3000人余を擁する巨大な研究施設である。

 

新聞報道によれば、産総研の中の「特許生物寄託センター」内で内規違反の病原体約300株を受け入れ、99年までの間に、ブルセラ菌、鼻疽菌のような、最悪の場合死に至るような「レベル3」の菌の培養等を、その危険性を知らせずに非常勤の女性等8名に通常の実験室で行わせていたというのだ。そして01年に同センターの幹部の一人がこの事実を把握し、研究所、省庁等に対処を求めたが受け入れられず、03年産業界の微生物関係を扱う経産省の生物化学産業課、又業務をセンター側に委託している特許庁も、事実を把握していたにもかかわらず対策に乗り出さなかった。そして076月法改正施行で届出が必要となったため5月末に処分したそうである。問題把握から菌の処分まで何故6年もかかったのか理解出来ない。

 

さらに重要な事はこの問題を指摘した幹部に対し対策を講ずるどころか「この件に対し、何も行動をするな、話題にもするな」と応じ、職員に対しては口封じのメールを流すことまでしていたことである。この幹部はその後もひどい圧力を受け退職している。

 

これらの事態に接し、私共市民会議は、バイオハザード予防市民センターの本庄重男氏と市民バイオテクノロジー情報室の天笠啓祐氏の同意を得て作成した「抗議文、質問書」を持って126日午後、市民側3名の少人数で、研究所側センター長等12名と対談することになった。質問書(別紙)に対する回答は後日文書でもらうことを約束し、その回答によっては再度訪問することにしたが以下は当日の質疑応答の一部である。

 

Q1017日の朝日の報道は研究所が自発的に公表したものか?

ANo

Q:もしあのスクープがなかったら隠し通すつもりだったのか?

AYes

Q:産総研の関係者から聴いた事だが、あの件は大した事ではない、もっと深刻な問題があると言っているが本当か?

A:そのような者がこの研究所にいるとしたら恥ずかしい事だ。

Q:我々も関わってきたつくば市の中の理化学研究所、感染研の霊長類センター、筑波大、農水省のいくつかの研究所等は皆何らかの形(完全協定等)で、つくば市との信頼関係を築いているが産総研は特別の存在だと思っていたのか?

A:病原菌を扱っているという認識がなかった。

Q:バイオハザード防止のためのガイドラインはあるのか?

A:あるけれども周知徹底していない。

Q:非常勤職員に対する安全教育を行っているのか?

A:行っていなかった。

 

対談は約1時間穏やかに行われたが杜撰管理の経緯を明らかにし所内の改革はできると思うが、隠蔽体質の壁を打ち破るのは中々容易ではないと言う印象を強く持った。

 

(事務局注)

 産総研のHPによれば、「特許生物寄託センターの管理体制等に関する調査委員会」が設立され今まで4回開催されている。08130日開催予定の第5回調査委員会で最終報告書案の審議を予定している。

 最終報告書で取り上げる論点整理は次の5点である。

 @ 問題となった菌を受け取り保管した経緯、その原因、並びにその保管の現状、特に管理体制の妥当性と再発防止策

 A 事実が判明した後の産総研等の対応の妥当性

 B 告発した元職員への産総研による対応の妥当性

 C 特許特別会計における電子顕微鏡調達及び研究費の使途に関する問題

 D 寄託センターを含む産総研コンプライアンス体制の妥当性

 

 委員の構成は、委員長 加々美博久(弁護士)、委員 高 巌(麗澤大学国際経済学部教授)、手柴貞夫(協和発酵工業(株)技術顧問)、吉倉廣(国立感染研名誉所員)の4名である。