■科学者として                               

米国のサルモネラ食中毒

                  新井秀雄(代表幹事)

 

米国CDC(米国疾病対策センター、Centers for Disease Control and Preventon)の7月3日の報告(注)で、4月10日頃からみられたサルモネラ血清型セントポールによる食中毒の流行が依然として終焉せず、40州とワシントンDCさらにカナダでの確認が発表された。それまで稀であった血清型セントポールによる食中毒が4月末にテキサス州とニューメキシコ州で確認されて以来、流行の広がりは全米に波及し、遺伝子解析で同一の菌が943名から分離された。分離は、一番多いテキサス州(356名)、次いでニューメキシコ州(98)、イリノイ州(93)、アリゾナ州(45)からワシントンDC(1)やケンタッキー州(1)まで様々であるが、検査が徹底すればさらに増加する可能性がある。患者は1歳以下から99歳まで、性差はなく、テキサス州で80歳代の男性が一人死亡している。生の食材に使用されているトモトの汚染が追及されている。いまのところ、この菌はミニトマトの種類や自家栽培のトマトからは見つかっていない。ファストフード大手のマクドナルドが該当種類のトマトの使用を中止した。

この食中毒は、感染後12時間から3日間で下痢、発熱、腹部の激痛を伴い、通常47日間続く。殆どの場合は特別な処置がなくてもおさまるが、幼児、高齢者、免疫不全などの抵抗力の低下した人々には劇症化が危ぶまれる。その場合は菌が腸から血中に広がって他の部位にも波及し、死亡することもある。この時は、的確な抗生物質の投与が必要となる。

CDCは、消費者の予防策として、(1)トマトを購入した後2時間以内に冷蔵すること(2)傷んだトマトの購入はしないこと、それらは捨てる(3)トマトを流水でよく洗うこと(4)生食のトマトは、生肉・鮮魚介類、生素材と分けること(5)調理で食材の種類を変える際は、まな板、皿、食器材、調理台を熱湯と洗剤で洗うように勧めている。

昨年の同時期では、この血清型のサルモネラ食中毒は全米でわずかに3名の事例しかなかった。詳細な調査と解析が今後も精力的に追及されるであろうが、かつての病原性大腸菌O157 の流行が思いやられる。気候変動の影響を考える向きもあるが、食材を介する「広い意味でのバイオハザード」の危惧はないのか、今後も事態を冷静に注目する必要がありそうだ。

夏場は、とくに生の食材の摂取は要注意。年間を通して、生卵は決して食べない(サルモネラ食中毒が怖いから)と主張する細菌学者もいます。                 

 

Investigation of Outbreak of Infections Caused by Salmonella Saintpaul

 (200874日、http://www.cdc.gov/Salmonella/saintpaul/)


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