遺伝子組換え生物等規制法及び関係省令に関する

文部科学省ライフサイエンス課との質疑応答内容

041021日〜1112日の電話及びメールによる)

 

 

回答は、文部科学省ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室 土門氏

質問は、バイオハザード予防市民センター 事務局長 川本幸立 による。

なお、以下において、特に断らない限り、

 「遺伝子組換え生物等規制法」を「法」

 「H16年文部科学・環境省令第1号」を「省令」

 「文部科学省旧組換えDNA実験指針」を「旧指針」

 「罰則」とは「遺伝子組換え規制法」に規定されたもの

を言う。

 

一次バリアー

〜安全キャビネットとHEPAフィルター〜の現場性能試験に関する規定

 

Q.旧指針においては、安全キャビネットの検査について、付属資料1および3の「安全キャビネット及びHEPAフィルターの規格」でその内容(規格・構造・検査・性能)が記されていましたが、「省令」では見当たりません。

 @ 通達などにより、同様の内容を事業者に指導しているのでしょうか?

 A 「省令」で指定しない理由についてご説明ください。

 

A.

@ 旧指針の検査内容に準じるものを事業者が実施するものと考えていますが、指導はしていません。

A 安全キャビネット(現在は、正確には「バイオハザード対策用 クラスUキャビネット」といいます。)の規格、仕様については2000年のJIS規格(JIS K3800-2000)に規定されており、これは遺伝子組換え生物のみならず全ての病原性微生物を使用する実験に適用し得るものとなっています。従いまして、他法令で網羅されているものについては二重に規制を行わないという原則に則り、二種省令では規定していません。

 

Q2000JIS規格により、「法」に明記されなくとも、事業者が遵守することが自明であり、遵守しない場合に別の法により罰則の対象となるというのであれば「二重規制」となると考えられます。しかし、そうでない場合は、「法」にJIS規格の遵守を明記することが「二重規制」になるとは考えられません。結局、事業者が遵守しなかった場合、罰則の対象となるので、「省令」で指定しなかった、ということではないですか?

 

A.「遺伝子組換え生物等規制法」は、遺伝子組換え生物を使用する全ての行為の主体に対して適用される法律です。この「法」あるいは「省令」で安全キャビネットの具体的な機能、構造等の仕様を規定して、その遵守を遺伝子組換え生物を使用する「事業者」に義務付けると仮定します。

 すると、遺伝子組換え生物を使用する事業者は、安全キャビネットの具体的な機能、構造等の仕様について、自らの責任において法令に適合していることを保障しなくてはなりませんが、遺伝子組換えを使用する全ての事業者にそのような測定能力が備わっているとはいえません。その意味においては、実態を鑑みずに法あるいは省令レベルで安全キャビネットの具体的な機能、構造等の仕様を規定して、遺伝子組換え生物を使用する事業者に義務付けることは過剰な規制であると考えます。

 また、罰則を適用する場合、事実確認が必要ですが、全国の遺伝子組換え生物等を使用している安全キャビネットの具体的な機能、構造等の仕様について検査する当事者能力は行政府にはありません。現状では、組織においても予算措置においても実施不可能な規制は不合理です。法の考え方において重要な点は、拡散防止措置が適切に執られていることです。安全キャビネットの仕様を具体的に記載して、その部分を重点的に規制しても実験の安全確保に有効であるとは合理的に考えられません。この文脈においてのみ、「事業者が遵守しなかった場合、罰則の対象となるので記載しなかった。」という表現は意味を持ちえます。

 

Q.実験者及び周辺環境の安全性確保の点から、安全キャビネット及びHEPAフィルターの性能は工場出荷時のみならず現場設置後定期的にその性能を確認する必要があると考えます。

@「省令」などで規定していない、指導もしていないということは実施するしない及び実施した場合でもその内容は事業者次第ということになるのでしょうか?

A今までも、HEPAフィルターの現場性能試験で0.3μ付近の透過率が0.01%を越えないことを確認する場合、試験エアロゾルを負荷せずに行うケースも見受けられました。日本空気清浄協会規格(安全キャビネットUB現場試験)でも相当量以上の負荷を与えることを規定していました。事業者まかせにせずに厳密に規定する必要があると考えますが?

 

A.現行のJIS K3800-2000の規格では、現場試験(設置後検査、維持管理検査)がありますので、JIS規格に準拠している場合には現場での性能試験も当然実施されているものと思います。その前提の上で、

@については、事業者次第ということになります。

Aは、そもそも現場でHEPAフィルターの検査を厳密に行うこと自体が難しい一面もあります。

 

地方自治体との連携

 

Q.地方自治体は住民の健康と安全確保に責任を持つ立場にあります。その点で、文部科学省と地方自治体の連携(情報交換や制度の整備など)が必要と考えます。

@文部科学省として「法」に基づく情報(13条〜15条、30条・31条関連など)について、関係する地方自治体に情報を提供することを考えているのでしょうか?

A「法」では地方条例の制定を推奨しているのでしょうか?

 

A

@ 考えていません。

A 「法」は事業者と国との関係を規定したもので、地方自治体については範囲外です。

 

事業者の報告

 

Q.法30条の「報告徴収」規定は、第2種使用についても文部科学省の指定する項目について報告するようになっているのでしょうか?

A.第1種使用を対象としたものです。

 

Q.ということは第2種使用については、「省令」で定められておらず、「確認の申請書」が提出されるものを除き、事業者は報告する必要がないということになりますが

A.そうなります。

 

旧指針のP4レベルの扱い

 

Q.旧指針のP4レベル規定が「省令」には見当たりませんが、これは「確認の申請書」提出により個々に指導するということを意味するのでしょうか?

 

A.実験分類がクラス4の宿主あるいは核酸供与体を使用する組換え生物を使用する実験は、全て大臣確認実験となります。大臣確認申請の実績から言いますと、そのうち大半の実験はP3までの拡散防止措置で十分安全が確保されています。ただし、これまではありませんでしたが、きわめて危険性の高い組換え生物を使用する実験が想定される場合については、P3レベルの拡散防止措置に加えて特段の具体的な安全対策を執っていただくことになります。安全対策の具体的内容については文部科学省と申請者の間で別途協議いたします。

 

WHOガイドラインとの関係

 

Q.省令内容は、WHO2版改訂版内容も反映されているのでしょうか?

AWHOガイドラインについては反映されている部分もそうでない部分もあります。

 

QWHOガイドラインの位置づけ〜最低限遵守する必要があることが規定されたものと考えるか、参考程度ととらえ、地域性などを考慮して取捨選択できるものととらえるかなど〜及び反映されていない部分の内容についてその概要をご教示ください。

A.文部科学省ではWHO2版改訂版については、参考資料程度と考えております。WHOのガイドラインは病原微生物の取り扱いの安全確保に係るものであり、二種省令は遺伝子組換え生物一般の封じ込め利用に係るものですので、本質的に方向性は異なります。従いまして、わが国の規制とWHOガイドライン逐一比較した資料はございません。そもそも二種省令はWHOガイドラインを全て反映したものではないので、反映されていない部分も当然あろうかと思います。

 なお、WHOのガイドラインとはいえ金科玉条ではありませんので、科学的知見の蓄積に伴い適宜見直されるべきものです。現にこの11月には暫定第2版から第3版に改定されました。第2版はドラフトのまま終わりましたが、第3版は決定稿です。前回の版と比較して、より詳細に精密になっておりますので、次回の省令改定の際にも参考にさせていただきたいと考えております。

 

情報共有とパブリック・コメント

 

Q10.法30条、31条の情報は国民に開示されるのでしょうか?

A10.「法」には特段の情報公開措置を想定していませんが、情報公開法の手続きにより判断されることになります。

 

Q11.法35条の国民の意見聴取は、随時募集するということでしょうか?

A11.特定の項目についてパブリックコメント手続きをすることであり、随時ではありません。

以上

(文責:バイオハザード予防市民センター 川本 幸立)