バイオハザード裁判:予研=感染研実験差し止めの法理

予研=感染研裁判原告の会・同弁護団編著

(上田耕一郎・前参議院議員)

 

新宿区戸山のわが国最大のバイオ施設・国立予防衛生研究所(現在、感染症研究所に名称変更)の移転と実験差し止めを求める訴訟が、11年余の審理をへて昨年7月に結審し、遅くとも今年3月までには東京地裁の判決が予想されている。この訴訟は「バイオハザード」(生物災害)にたいする日本における最初の本格的裁判として注目を集めてきた。本書は、序論、訴状、最終弁論、文書リストと年表を編集した力作で、住宅密集地のバイオ施設告発の集大成である。

 

 圧巻は200ページ近い「最終弁論」である。研究所の実態、生物災害の危険性、安全対策と設備の欠陥、違法性と、住民の人権を守る立場で最新の科学的成果を駆使しつつ展開される緻密な立論は強い説得力を持つ。この裁判が「P3・P2実験室等の密集度が世界最高のバイオ施設が、世界最悪の立地・環境条件で実験を強行することの是非をめぐっての訴訟」であることを、すべての行が鮮明にしている。同時にその告発は、安易きわまりない立地決定、新宿区議会と区長、住民、早稲田大学の世論を無視した移転強行、誠意の無い裁判対応など、厚生省、予研側の国民不在の官僚病の具体例の貴重な記録ともなっている。国際査察の偽造などは、その最たる愚行であろう。

 

 最終弁論には、「科学裁判」としての性格を持つこの裁判をライフワークとして取り組んできた芝田進午氏の「科学論」が意見書として添付されている。「あとがきに代えて」で、支援する会代表の浦田賢治早大教授は「世界に誇ることができる歴史的な最終弁論になった」と確信を述べ、真理と歴史の法廷は原告の勝利を必ず明らかにするだろうと結んでいる。

 

 「文書のリスト」では、原告提出の準備書面や意見書、505号に及ぶ膨大な書証に、原告281人がこの裁判に注ぎ込んだ熱意とエネルギーのすごさに感動させられる。それだけに、WHOや先進諸国に比した日本のバイオセーフティ法制の遅れを回復することの緊急性を痛感させられた。

 

 住民運動が共同で創り到達した法理論として本書を推薦したい。

 

(「しんぶん赤旗」2001219日掲載)

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