■科学者として エボラ出血熱ウイルスの国内侵入を阻止する                

新井秀雄(代表幹事)

 

今回のエボラ出血熱(以下、エボラ)の感染流行は、この9月10日までにアフリカ西部4カ国で患者合計で約4800人、そのうち約半数が死亡している。患者二人のうち一人が死亡するという高い致死率は確かに衝撃的であるが、流行現地の西アフリカ諸国ではエボラによる死者が大きな問題とは受けとめられていないという。現在のエボラ流行中の西アフリカ4カ国の一日あたりの感染症による死者数は、エボラよりも結核、下痢、マラリヤ、エイズのほうが何十倍、何百倍と圧倒的に多い。このような現実の中で、WHOが8月8日に「(西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行は)国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」との宣言をだしたが、流行現地の人々はこの宣言をどのように受けとめているのであろうか。

エボラは、インフルエンザのように人から人へと空気感染することはなさそうであるので、直ぐにも世界的なパンデミック状態になるとは考え難い。そこで、流行地域の西アフリカ諸国にもともと風土病的な様相を示しているエボラを、国内に侵入させないように水際で侵入阻止するためには、検疫が有効に機能していることが肝要となる。エボラの診断法は、既に感染症研究所で確立されているから、診断のための機材を侵入門戸となる可能性の高い成田空港と関西空港の検疫所内に事前に搬入して置けばその場で診断できる。そして検疫施設内にエボラ等の高度に危険な病原体に罹患した患者に対応できる病院施設が併設され、そこで隔離と治療ができる体制が完備されているべきである。国内に存在しないエボラのような病原体の侵入を門戸で阻止するためには、検疫所施設から患者などを外部の病院施設へ搬送することも、また患者由来の検査試料の外部への搬出も禁止されねばならない。検疫所でエボラ陽性の診断結果が出た場合は、患者と接触した可能性のある人々(乗客、乗務員、入国審査や検疫従事者など)についても一定期間の隔離と検査が必要となるが、この場合も検疫施設内で対応できるようにする。ことは急を要しているから、消毒滅菌操作の可能な前室を備えた移動式(プレハブ方式)の検査室、病室を早急に設置して対応するのが実際的と考えられる。エボラが空気感染でないのであれば、厳密な陰圧構造も特別必要とはならない。例えば、プレハブ式のP3施設は、かつての予防衛生研究所(現感染症研究所)に実際に設置され稼働していた経歴がある。検疫所内の他の既存建物とは別の独立したプレハブ施設の導入は直ぐにでも可能のはずだ。

 西アフリカ流行現地で高致死率が報じられているエボラであるが、この致死率の高さは、

体力を維持する栄養状態、気候風土などの環境状態や利用可能な医療状態などによっても変動する。万一日本でエボラが流行してもその致死率はずっと低いと推測される。西アフリカの流行現地の貧困問題が解決されれば、エボラばかりでなく各種の感染症の脅威も様変わりするに違いない。国内への侵入を阻止する努力はもちろん大事であるが、何かもっと根本的な解決すべきことが多々あるのではないか。

 最近話題のデング熱、その国内での病原性はまず心配ない。同様に、蚊によって伝搬される感染症の一つであるが、国内では稀である日本脳炎の方が、もし万一感染して発症すればデング熱よりよっぽど危険である。

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