ワクチントーク32  新型インフルエンザ対策ー新連立政権に望む

                臼田篤伸(代表幹事、風邪・インフルエンザ研究者)


官僚支配を打ち破れるか

 舛添厚労相は衆議院選挙の応援で、「民主党にインフルエンザが止められますか」と叫んでいた。もとを糾せば、彼はワクチン・タミフルメーカーの御用学者の言いなりになっている厚労省官僚の、そのまた言いなりになっていただけ。ワクチン・タミフルを全国民にやることが新型対策だと勘違いしている。恥知らずもいいところだ。民主党は官僚の天下り禁止などの選挙公約を出したが、まずは御用学者支配のインフル対策に異議を唱えられるかが重要だ。その期待はほとんど空しいと思うが、膨大な無駄支出を抑制するためにワクチン・タミフル万能論の官僚達にその効果と副作用のきちんとしたデータを出させることが肝心である。これまでの御用学者が居座っている限りそれは無理な注文となろう。

御用学者支配のマスコミに翻弄されるな

 マスコミのほとんどが、御用学者の言いなりになって、批判能力を完全に失い、ワクチン・タミフルの旗振りに徹している。だから、民主党の中の進歩派がワクチン・タミフル批判をやっても、マスコミにたちどころに叩かれるのは自明のことだ。これではまるで、かつての翼賛政治と同じではないか。社民党がその辺で存在価値を示してもらいたい。厚労省は記者会見を介して、マスコミへの情報操作を常に行ってきた。官僚の勝手な発表を野放しにしないよう新政権がきちんとチェックする必要がある。

●心ある研究者を登用せよ

 インフルエンザの重要事項の決定には、一部の決まった学者ばかりが関与してきた。それもワクチン・タミフルの旗振り学者ばかりである。欧米の学者や製薬会社にしっぽを振る人間が揃っている。感染研の幹部もその中心的役割を果たしているのは周知の事実だ。科学的、客観的に医薬品を評価する姿勢がほとんど見られないのが、これまでのインフルエンザ関連の情報といっても過言ではない。大阪を中心として、科学的で説得力あるインフルエンザ情報を発信している学者グループがある。その代表格が、浜六郎氏が主宰するNPO法人・医薬ビジランスセンターである。

●時代錯誤の新型論

 鳥型インフルエンザ・H5N1から新型が発生するとのおおよその前提が感染研の研究者らを含む学者らによって作られていた。よって、凶暴なインフルエンザが発生するとの脅しがまかり通っていた。パンデミック報道で、必ず始めに出てくるのが、スペイン風邪である。このときの状況を知ることは重要だが、そのことを今日そのまま当て嵌めていること、それどころか、もっと危険だとも言われてきた。驚くべき時代錯誤だ。これでは現代にマッチした対応が出来るはずがない。スペイン風邪はウイルスを何も分かってない時代の出来事である。よって、成り行き任せの状況だった。その上、第一次世界大戦が勃発し、世界的な不況、貧困、不衛生に覆われていた時代でもあった。時代背景を無視したパンデミック予測が今日の混乱を引き起こした。

「新型」と違うAソ連型(H1N1)の変異型

 今度の「新型」は、50歳代以上の人が罹りにくい特徴がある。これについては、前出の浜六郎氏が、『薬のチェックは命のチェック』35号で分かりやすく解説している。季節性インフルエンザの4分の1を占めるAソ連型(H1N1)と同じタイプだからである。50年前にアジアかぜ(HN2)が発生するまでは、H1N1のみが流行していた。したがって1956年以前に生まれた現在53歳以上の多くの人はHN1型の免疫を持っているから罹りにくいのは当然のこととなる。

●「病院囲い込み」政策を見直せ 

病院や診療所がその感染拡大の場として危険との指摘が見られるようになったにもかかわらず、元の木阿弥で、病院囲い込み政策に回帰してしまった。タミフルを投与したり、ワクチンを打つために、わざわざ病院へ行かせることが再び目的化したといって差し支えない。ワクチン・タミフル推進者達は、この矛盾をこれまでと同様に何とかごまかすであろう。今日のインフルエンザ医療に概ね肯定的立場をとる読売新聞の「医療ルネサンス」(62日付)でさえ次のような疑問を指摘する。「季節性インフルエンザにかかっても大半の人は自然に治る。病院に来ればかえって感染を広げてしまう恐れもある。今回の新型ウイルスでも、タミフルを服用する前に、症状が治まっていた患者も多い。タミフルは、高熱などの症状を1日か1日半早く鎮めるとされるが、肺炎など合併症を防ぐデータはない。また発症して48時間以内に飲むことが必要だ」と。厚労省は、病院へ競ってかかることの危険性をはっきりと国民に示すべきである。インフルエンザの成り行き任せの流行と、ワクチン、タミフルの大量投与が繰り返され、「病院囲い込み政策」の愚行が果てしなく続くこととなった。

●危険なワクチン・タミフル オンリー路線

今日までの新型による死亡者数を見ると、意外なほど少ない(915日で14人)。つまり、新型と言っても通常のインフルエンザよりむしろ軽いといってもよい。亡くなった人のほとんどが、内臓の慢性疾患を持っていた。タミフル、リレンザの副作用によることも十分に考えられる。新型ワクチンの危険性は、1976年に米国ニュージャージー州のフォート・ディクスの陸軍軍事センターに始まったH1N1型インフルエンザ騒動で明らかになっている。当時のフォード大統領によって、大規模なワクチン接種作戦が実行された。ところが、ギランバレー症候群という神経疾患が接種者に相次いで発生したため中止に追い込まれた経緯がある。新型ワクチンが、どさくさに紛れて安全性も確認しないままこれから大量接種されようとしている。新型インフルエンザよりもワクチンの危険性のほうが大きいと言わざるを得ない。一方、タミフルについては、これまで再三指摘したように、たいした効果もない上に、飛び降りなど重大な副作用の発生が明らかにされている。ところがここにきて、タミフル全面解禁にまで立ち至っている。これまで禁止されていた乳児や10代、そして妊婦にまで使用を推奨する事態になった。まことに恐ろしいことが進行中である。病気は全て薬で解決する欧米合理主義の典型である。

●従来型風邪薬の活用を

ここで従来からある市販の風邪薬を、引き始めにすぐ家で飲むことによって、軽く治められることを科学的に説明したい。自分に合った薬を常備しておくことにより、副作用の不安もなく、病院に慌てていく必要がなくなるばかりか、他人にうつす事も少なくなるのである。かぜ・インフルエンザの症状を重くするのは、主にリンパ球のウイルスへの過剰防衛によるものだ。このリンパ球の働きを適度に抑えてくれるのが、全ての風邪薬に共通に入っている塩酸メチルエフェドリンである。その効果を適度に調整するために、ほかの副作用の少ない成分も調合されている。インフルエンザの初期の段階では、リンパ球のウイルスへの反応が始まったばかりだから、発熱や頭痛もまだ軽く、少量の風邪薬でも威力を発揮する。火事と同じで、家で出来る初期消火の成否が決定的に重要なのである。

●無責任きわまる自然治癒対策を見直せ

成分も効果も怪しい上に危険と隣り合わせのワクチン・タミフルで、国民を病院に総動員する前に本当にやるべきことは何なのかが、今厳しく問われている。「手洗い、うがいをこまめにやろう・・・」など、日常の生活習慣ばかりを取り上げ、少しアレンジしつつ、進歩のないうたい文句を何十年となく繰り返してきた。国民を愚弄するものと言うほかない。客観的データに基づいて、納得できる予防対策を国民の前に示せ。筆者は、今日のインフルエンザ対策の批判を目的とするものではない。体にやさしく、安全で、安上がりの合理的かつ具体性のある予防対策を訴え続けてきた。実際に風邪(インフルエンザを含む)が進みやすい時間帯の調査を実施した。その結果、夜中の時間帯に行う「ぬれマスク法」や「予防嚥下法」などが効果的と判明した(『かぜ症候群における咀嚼と嚥下の役割』日本プライマリ・ケア学会誌211号、1998年)。

手洗い「予防論」の愚行

今日の自然治癒対策のデタラメぶりを象徴するのが手洗い「予防法」である。これの効果を証明する疫学データなど何一つない。インフルエンザが手を介して感染すると言う理屈をワクチン推進者らが創り出した。自然治癒対策も建前上作っておく必要に迫られたのであろう。インフルエンザウイルスでも、体外に出てから一定時間生存し、手ばかりでなく衣服を含め体全体に付着していると彼らは言う。手は常に汚れるためにあり、手洗いは日常の衛生習慣に過ぎない。手ばかりを徹底的に洗うことを奨め、そのための消毒薬の宣伝が目に余る。手の洗いすぎは善玉の常在菌を死滅させ、有害な黄色ブドウ球菌をはびこらせ、手荒れを一層助長するのである。驚くべき非科学的論法で、国民が手洗い「予防論」で洗脳されている。マスコミはこぞって徹底した手洗い法を図解入りで紹介した。今回の手洗いキャンペーンによって、駅などの手すりにつかまりたくないなど、一億総潔癖症になりかねない事態さえ生まれている。人は無数の雑菌の中で生きているのであって、それら常在菌を排除するのではなく、うまく付き合って免疫力を高めていくことのほうが体にとってずっと大切なのである。

 

●自己管理できる感染症―ウイルスの侵入場所が発症場所

 上気道感染症である風邪・インフルエンザは、体の予防管理しやすいところから症状が始まる。症状が進む睡眠中の対策と自分に合った風邪薬の早期服用を行えば、症状を軽く押さえ込める。その結果、無理しなければ日常生活を休まずに続けることが出来るのである。



目次