タミフル投与の危険性                             

臼田篤伸(バイオハザード予防市民センター代表幹事)

 

●「新型」が軽いインフルエンザであることは客観的事実

20091113日付『週刊朝日』は、新潟大学教授・安保徹氏の新型インフルエンザへの意見を見開き2頁で掲載した。ワクチン・タミフル“翼賛”の中にあって、真実を報道した特筆すべき記事といって差し支えない。当センターでも類似の見解は度々発表してきたが、世界的な免疫学者の所見は、鋭く的を射ている。主な点を列記すると次のようだ。・新型は季節性より毒性が低いことが判明した・季節性インフルの死亡率が千人に一人に対して、新型では10万人に一人で、季節性に比べて100分の一である・ワクチンの副作用によって10万人に一人程度の重い副作用事故がおきているので、病気とワクチンの危険性が近接している。よって、ワクチンのメリットがないばかりか、接種によって副作用のリスクを負う。タミフルについても、異常行動や突然死は、10万人に一人ほどで、新型で死亡する危険性と同じ確率なのでメリットなしという。このほかにも、当センターの、「新型インフルエンザに関する見解」とほとんど一致した意見が記述されており、当センターのインフル路線の妥当性が裏付けられたと考えている。以下、主に浜氏の書籍を引用させていただいて説明を加えていきたい。そのあとで、当センターの独自の見解を述べたい。

●タミフル薬害の発覚−浜六郎氏の献身的追究・努力の結果

 今日のタミフル薬害の発見と、その基本的発症原理の解明は、NPO法人・医薬ビジランスセンター代表の浜六郎医師の功績なくしてはありえない。数々の論文発表や、著作の出版を通じて、タミフルの危険性を白日の下に曝した。とりわけ、『やっぱり危ないタミフル』(2008年、金曜日)にその全体像が記されている。今日、こういう緻密な薬害問題の追究者は日本全国はおろか、全世界的にも見当たらないのではないか。浜氏は、薬害を許さない強い信念と、被害者に対する心からの思いやりの上に立って、真の原因究明をきちんと行う姿勢を貫いている。そこから見えてくるタミフル薬害の現実とは、メーカー、インフル学者、厚労省が一体となった目的のためには手段を選ばない手法そのものだった。

●タミフル薬害を徹底究明

○はじめはメーカー自身が警告したことだったー「一歳未満の乳児にはタミフルを投与しないように」―新型インフル騒動の中で、不安が現実となった

 薬害の原因解明には、高度の医学・統計学的知識が必要なため、薬害が疑われる場合でも、世界的で、広範囲の症例や文献の調査が出来ないと説得力のある立論ができない。30年以上も薬剤の評価検討を行ってきた浜氏にとって、メーカー自身が自主的に標記のような危険情報を提出した(2004年1月)ということは、そのことに相当の根拠を持っていることが直感的にわかったとのこと。すなわち、「メーカーは、1才未満の子には都合が悪いことが起きると十分に予想しているに違いない」と考えた。ところが、あろうことか日本小児科医会は、その直後に、「1歳未満の患児にタミフルを使用してはいけないのか」との質問状を厚労省に提出したという。これに対し同省は、「(保護者の)同意を得た上で、慎重に」するなら「投与してもかまわない」との主旨の回答をしたとのことだ。この回答には、「幼若ラットの試験において薬物の脳内への高濃度の移行が確認されたとのデータがある」との記載もあったという。

○重大な危険情報を発見

 浜氏は、2005年1月、タミフルの承認申請概要(新薬承認情報集)から重大な事実を確認した。タミフル投与後数時間以内に、生後7日の離乳前ラット24匹中、18匹が死亡していた。その後の追試験でも同様だった。症状は、体温低下や自発運動の低下、呼吸緩徐・不規則などであり、中枢抑制の結果もたらされた呼吸抑制で死亡したことが明らかだという。これは、人においても乳幼児、とりわけ1歳未満では非常に危険なことを示唆していた。浜氏が発行人を務める『薬のチェックは命のチェック』(医薬ビジランスセンター季刊誌、以下『薬・命』と略記する)で「乳幼児には禁忌とすべき」ことをずっと訴えてきた。

○ぞろぞろ出てきた小児の突然死

 これら事実に符合するように、乳幼児の突然死事故がぞろぞろと出てきた。2002年から2003年冬に、大阪で6人の小児が睡眠中に突然死したことが、大阪市立総合医療センター小児救急科の塩見正司医師によって論文で発表された。6人中4人は、タミフルを一回だけの服用で死亡した。他の一人は同じインフルエンザ薬・アマンタジン、もう一人は喘息薬・テオフィリンを服用していたという。このほかにも各地で突然死や、異常行動死が報告されている。タミフル薬害では、異常行動が注目されがちだったため、呼吸抑制による突然死の実態はあまり表に出てこなかった。これを医学的に解明したのが浜氏であった。

○発熱から呼吸不全が早すぎる

 最近のタミフル使用は常軌を逸している。あらゆる年齢層に投与を可能としたことが、小児を中心として突然死の発生を増加させ、あるいは、重症者を死に至らしめた可能性が否定できない。11月初めに岩手、京都、兵庫で亡くなった3人の女児らの死亡もそれを示唆している。タミフルには一切触れられていない。混乱を恐れて情報操作している可能性が高い。いずれのケースも持病が無いのに、発熱のあと数時間から1日で呼吸不全に陥っている。インフルにはほとんど無かった現象が今回の事例を含めて、これほど立て続けに起きることはタミフルなど、薬剤の介在を強く示唆している。

○現実に、人間で“動物実験”をやっているようなもの

 1123日付読売新聞によると、インフルエンザ脳症の患者が7月以降、28都道府県で計132人に上ることが、国立感染研の調査でわかったという。季節性インフルエンザによる脳症患者の報告は、例年4050人で、新型インフルの流行から4ヶ月でその2倍以上に達したとのこと。その大半を15歳未満が占めている。さらに、脳症は、「ウイルスによって免疫系が過剰に反応し、脳が腫れた状態になる病気」とのコメントが記されている。タミフル服用について一切触れられていない。一方、インフルエンザ発症後に飛び降りなど生命に影響が及ぶ可能性のある重度の異常行動は、925日―1115日の間に、全国で151例報告された(12月1日付毎日)。とくに未成年者に多い。例年に較べ頻度の高さが指摘されている。これらはいずれも、タミフル薬害の特徴を強く反映しているにもかかわらず、浜氏が指摘したような従来の脳症とは異なる「タミフル脳症」から巧みにはぐらかしている。しかもこの数字は氷山の一角に過ぎないとみられる。全年齢層へのタミフル投与による壮大なる人体実験が目下進行中である。

●インフル死の新たなパターン

 上記のような死亡事故は従来のインフル死ではそれほど問題になっていなかった。今度の「新型」を通して、タミフルが膨大な人数に使われた結果、「タミフル薬害」としてクローズアップされたことと見て間違いない。下記のような短期突発型の害作用と見るのが自然である。脳中枢への直接的作用によってもたらされたものだ。中枢抑制として、呼吸抑制、体温低下、これらが引き金になって、睡眠中の突然死、急性心肺停止、肺水腫(非心原性)、異常行動事故死などを浜氏はあげている。

死に至らないまでも、タミフルによると見られる副作用の事例は、身の回りにも事欠かない。代表例として幻覚があるが、死と隣り合わせの恐怖体験などとして現れる。寝床に入って目をつぶると、枕元に「三途の川」の川が忍び寄ってきて、怖さで一晩中寝付けなかった。不眠のため、朝起きても足元ふらふら。普通1,2日の休み出で済むのに5日も休む羽目になったという。以下に示すようないろんな副作用を考慮すると、この薬は治癒期間を短縮するどころか、かえって長引かせることもあるので注意が必要だ。

○呼吸不全がなぜこんなに早くやって来るのか

 言うまでもなく、タミフルの副作用は、からだ全体に及ぶので、抗ウイルス作用とは別に、脳に働き、呼吸抑制、低体温がダイレクトにやってくるからである。呼吸不全が早くやってくるのは必然的帰結である。タミフルの未変化体は、通常は脳内にはほとんど移行しないが(血液―脳関門の働きによる)、未熟な動物や、インフルエンザ急性期(高サイトカイン状態)では、血液―脳関門が十分に機能せず脳内に移行しやすいことが分かっている。ちなみに、未変化体タミフルの4分の3程度が、肝臓の酵素(エステラーゼ)によって、抗ウイルス作用のある活性型タミフルに変わる。

○FDA(米国食品医薬品局)が3年前にすでに危険性を報告 

 『やっぱり危ないタミフル』によると、FDAは20058月から20067月までに発生した103人のタミフル使用後の有害事象患者を解析した結果を公表した。それによると、

@オセルタミビル(タミフル)の使用と異常行動は、時間的に関連がある。

A報告した医師の多くは、これが薬剤による副作用であると感じている。

B異常行動は極めて特異であり、インフルエンザ脳症や熱せん妄の典型的症状と異なる。

 この報告は、客観的な指摘であり、タミフルによって起きる特異なインフルエンザ脳症(タミフル薬害)を黙殺した今日の報道とは、相容れないものである。以上の所見を総合的に判断して、脳症の二つのパターンを総括してみよう。

●脳症に二つのタイプ

 従来、脳症というと、まず高熱が出て、痙攣や異常行動、言動などがあげられ、最悪の場合には、重度障害、あるいは死亡することがあるとされていた。多くの場合、解熱剤の乱用が介在することが明らかになっている。ところが近年、熱が下がったのに、突然の異常行動や、呼吸不全によって死亡するケースが目立ってきた。しかもタミフルが繁用されるようになってからの事態である。この二つの型を識別しておかないと、タミフル薬害の理解はできない。今日の報道は、単に「脳症」と言って、両者をごちゃ混ぜにして、焦点をわざとぼかし、タミフル薬害を隠蔽しているのが実状だ。そこで、当センターでは論理を分かり易くするために、脳症を次の二つのパターンに識別して考えることを提案してきた。

分子標的型脳症――中枢抑制型脳症

 浜氏は、タミフル服用1−2回で生じる低体温や呼吸抑制、突然死、肺水腫は脳中に移行した未変化体タミフルの中枢(脳)抑制作用によると述べている。よってこれは、「中枢抑制型脳症」と表現することができる。いずれにせよ、これはタミフル分子と、脳神経や神経伝達物質との相互作用で起こると考えるのが自然である。よって、当センターでは、分子標的型脳症と呼ぶこととした。「中枢抑制型脳症」でも無論構わない。

○免疫過剰型脳症―免疫過剰型はサイトカインストームによって起こる

 これまで脳症というと、高熱が出て、解熱剤の多量投与によって引き起こされるパターンがほとんどだった。これの本態は、リンパ球の過剰防衛反応とみるのが妥当である。すなわち、「過剰免疫型脳症」と表現するのが正しい。解熱剤によって発熱が極度に抑えられた場合、局所のリンパ球から、「もっと発熱させよ」のサインが脳に送られ、組織破壊性サイトカインの分泌が高められ(サイトカインストーム)、脳細胞が破壊された結果である。ちなみに、ワクチンによる副作用被害もこれに該当する。ほかの感染症の感染を受けたときにワクチンを誤って打つと、その抗原に対してリンパ球が一斉に過剰反応を起こす。これによってもサイトカインストームが起き、脳細胞が破壊される。この被害が後を絶たない。

●タミフル薬害に二つのパターン

浜氏は、タミフルで起こる害反応を大きく二つに分けた。短期突発型と遅発・持続型である。その中間的な症例もあることが補足されている。『やっぱり危ないタミフル』(金曜日)から引用させていただく。

○短期突発型

 1、2回服用後に起きる。その典型例が睡眠中の突然死と異常行動からの事故死である。くわしくは、既述の「インフル死の新たなパターン」の項を参照されたい。

○遅発・持続型

 このタイプの反応は極めて多彩だが、死亡につながる重症例の典型は、タミフルを5日間服用した前後から出現して、肺炎・敗血症となり、いろいろな臓器が冒されて死亡に至る遅発型の反応である(多臓器不全)。遅発型の場合には、しばしば出血を伴う。死亡には至らないまでも、遅れて異常行動が発現し、それが長引く場合(遅発・持続型反応)や、血糖値の上昇や糖尿病が悪化した例もあるという。また、両者の中間的な例として、高齢者では、短期突発型の呼吸抑制が起きた後から、肺炎や敗血症を合併して、それが重症化して死亡したとみられる例もあるという。

     「効く」データの捏造方法―データを都合よく総合して「効く」という作為(図13

 

 

 

●タミフルによる異常行動の有意差を否定するする悪質な統計操作

 タミフルによる重大な副作用の発生の可能性が高まっていく中で、危機感を募らせたタミフル推進者達は、統計学的にどうやって「タミフルは危険」の有意差をなくせるか知恵を絞った。データをどういじっても関連性を否定できないから、次の驚くべき手段に出た。

@服用時期を無視した集計法―明瞭な関連データを否定するためのトリック(図41日目の高い異常行動数と2日目の低いそれとを合体させ、タミフル薬害の有意性を打ち消した。

Aタミフル処方群のタミフル服用前の異常行動を、非タミフル群に編入した。服用、非服用の2群に分けておこなわれた統計調査だったが、服用群中の服用前の異常行動を探し出して、それを除外するならまだしも、非タミフル群にわざわざ編入する暴挙を行った。

●当センターのインフル対策−今日のインフル対策に欠如するもの

ワクチンやタミフルの推進派もちろんのこと、反対派であっても「風邪、インフルにおける昼夜の免疫力の差」を取り上げる人はまずいない。この辺に反対派が広く国民から支持されない原因の一つがあるように思う。「風邪を引いたら寝ていれば自然に治る」では日常活動を休めない人への説得力に欠ける。理想論ばかり唱えていても国民のニーズにきちんと応えなければ権力は取れないのと似ている。当センターの見解を以下に示す。

筆者(臼田)は、インフルに対する体の免疫力が昼夜で異なっていることに30年程前から着目してきた。客観的ベースがその出発点となった。つまり、インフルの症状に気づくのは起床時が多いこと、朝インフルの症状がないと、日中に症状が起きることはまずないことの2点だった。その研究結果を日本プライマリ・ケア学会誌(21巻1号、1998)で発表するとともに、その成果に基づいて、体にやさしく、安全で、安上がりの合理的かつ具体性のある予防対策を訴え続けてきた。簡潔に記すと次のようだ。筆者の歯科医院の患者706人を対象としたアンケート調査を行ったところ、症状自覚時間帯は、起床時が335人で、全体の50.4%を占め、統計学的にこの時間帯が有意に多かった。睡眠中の嚥下の停止をはじめとする上気道諸活動の停滞がウイルスの増殖促進に深く関与していることが推定された。また近年、新潟大学の安保徹教授が発見した、「白血球の自律神経支配」の法則によって、それが決定的に裏付けられた。夜中の副交感神経優位の時間帯にウイルスに対抗するリンパ球の活動が活発となり、発熱などのインフル症状を高めた結果だった。これらのことは、睡眠中に予防策を施す必要性に根拠を与えた。それに基づいて睡眠中に可能な予防策として、現状では、吸気加湿法を応用した「ぬれマスク」と目覚めた時に意識的に行う「予防嚥下法」が有益と考えている。そして、次善の策として、自分に合った市販の風邪薬をひき始めに飲むことによって、副交感神経の働きすぎとリンパ球の過剰防衛を抑え、結果として、風邪症状を緩和することが可能となる。自然治癒対策としてしきりと言われているような「手洗い」などにどれ程の効果があるのか、その疫学調査を目にしたことがない。ウイルスと対決することのみを目的とするワクチン、タミフルを推進する前に、もっと実感できて、体にやさしく、免疫力を高める予防対策の充実を望みたい。

●病院囲い込み政策の果て

繰り返し述べてきたことだが、インフルエンザかなと思ったら48時間以内に病院にかかって、診断キットで検査してもらい、診断されたらタミフルを飲ませることが国策として行われている。「病院囲い込み政策」は、当センターが現状のインフル政策を規定した名称である。タミフルを投与したり、ワクチンを打つために、わざわざ病院へ行かせることが目的化した政治であり、その結果生まれたのがタミフル薬害である。ワクチン・タミフル推進者達は、この矛盾をこれまでと同様に何とかごまかすであろう。タミフルは、高熱などの症状を1日か1日半早く鎮めるとされるが、その多くのケースで、タミフルが脳内に侵入した結果起こった低体温現象が関与しているのが真相ではなかろうか。肺炎など合併症を防ぐデータはないし、また発症して48時間近くたって飲んでもウイルスはすでに増えつくしているのが実体であろう。


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