わくちんトーク49  『インフルエンザと闘うな!』 出版記念シンポジウム報告

     臼田篤伸 (代表幹事 インフルエンザ・風邪・がん問題研究者)

 

『インフルエンザと闘うな!』 出版記念シンポジウム

闘う医療の空しさを知ろう

 

@闘うことが目的となった医療

 世界的な免疫学者・安保徹氏は、「体を鍛えるのは体操、免疫を鍛えるには風邪をひきなさい」、と言っています。今日、ワクチンやタミフルなどの新薬を使ってインフルエンザと徹底的に闘う医療をやっているのがこの日本です。インフルエンザに限らず、今日の医療全般にわたって病気と闘う姿勢が際立っており、世界ナンバーワンの薬の消費国であることとも符合しています。たとえば、世界で生産される降圧剤の6割近くを、抗インフルエンザ薬タミフルの9割近くを日本人が服用しています。こうした常軌を逸した薬の消費は病気を治して減らすのではなく、かえって病気を悪化させ、治らなくする役割をも果たしています。高血圧や糖尿病など、慢性病患者が増え続ける現状がそれを如実に物語っています。がんについては、言うまでもなく抗がん剤などによる泥沼医療が続いています。戦いを目的とした“好戦的な医療”と言えるのではないでしょうか。

世界最長寿国の名に浮かれていた日本ですが、最近ついに寿命が頭打ちとなり、男性では寿命がやや短くなる傾向を見せています。中高年を中心に、各種薬剤が継続投与されている現状と無関係ではありません。降圧剤、コレステロール低下剤、糖尿病薬、骨粗鬆症薬、ステロイド剤などの常用者が「お薬手帳」を携帯して歯科医院にも来られます。全国的には無数の慢性疾患治療薬依存者がいます。慢性関節リウマチなどの疾患でステロイド剤を毎日服用している方々の状況は、目を覆う惨状といって過言ではありません。

 

A病気と闘わないとはどういうことか

 『奇跡のりんご』(幻冬社)という本があります。無農薬・無肥料のりんご栽培を成功させた津軽人の物語としてヒットし、ベストセラーになりました。著者の木村秋則さんは、「絶対不可能」を覆したりんご農家として一躍有名になりました。木村さんがたどり着いた最終結論は、自然のままにりんごを育てれば、病気も出るし、虫もつく。「害をなさないように工夫するからそこにいていいよ、というのが私の考え。みんな自然が私に教えてくれたことさ」ということです。植物と人間では姿かたち、生き方はまったく違いますが、今日の医療のあり方を考える上で、大変示唆に富んだ考え方だと私は思いました。

 がんや慢性疾患、インフルエンザといった病気に対して徹底的に闘うことが目的化した現代医療と、ある意味で共通するものがあるように思います。それは今、「薬漬け医療」という名で呼ばれています。本書のタイトルは『インフルエンザと闘うな!』です。とことん闘うのがなぜよくないのか、本文で詳細に述べました。病気・病原体と闘いすぎていることにおいて、りんご農園とも共通点があるように思います。

 木村さんはりんご栽培で散々、苦労と失敗を積み重ねてきました。そこから得られた重要な教訓のいくつかを拾うと以下のようです。「農薬ばかり使っていると、りんごの木が病気や虫と戦う力を衰えさせてしまう。楽させるからいけないんだと思う」、「農薬さえまけば解決できると思っているから、病気や虫をちゃんと見る必要がなくなってしまう」、「農薬の影響で土の中の生態系が変化し微生物が激減して、土の温度が大幅に低下し根が十分に張れない。よって、りんごの木が強くなれず、農薬なしでは虫や病気が大発生する」、「畑に肥料を与えすぎた結果、畑に余分な栄養分が存在することになる。りんごの木は楽に養分を取れるから、根を十分に伸ばす必要もなくなる。根がやせ細ったままだ」、「肥料は化学肥料であれ有機肥料であれ、りんごの木に余分な栄養を与え、害虫を集めるひとつの原因になる」。これらのことによって、木村さんの畑には「ぎりぎりの栄養分しかないからりんごの木がもともと持っていた自然の力が引き出されたんだと思う」と。これらのことから、「知れば知るほど自然の力のすごさを実感した」と述べています。そして木村さんのりんごは今まで食べたことがないほど甘くておいしいことが全国的に評判になっています。

 さらに、人間に対して示唆に富んだ教訓を与えています。「文明があまりにも進歩して、人間は自分たちの根っこがどうなっているかを忘れてしまった。根っこをこんなにも痩せ細らせてしまって平気な顔をしているのが、現代人の偽らざる姿なのだ」と手厳しい。「栄養を与えられすぎた人間は、自然の抵抗力を失い、薬なしには病気に勝つことができなくなっているのではないか。現代人の免疫病の多発などにそれが表れているように思う」、「りんごに農薬・肥料を与えてばかりいるのは、人が車にばかり乗っていると足腰が弱くなるのと同じようなものだ」などと記しています。

さて、本書『インフルエンザと闘うな!』は、毎年、毎年ワクチンとタミフルなどの新薬を与え続けるだけのわが国のインフルエンザ医療のあり方を、根本から問いただすために書いた本です。木村さんの本から、「がん細胞やインフルエンザウイルスがそこにいてもいいよ、害をなさないように工夫するから」という教訓をいただきました。ただし人間には「社会生活」によるストレスがあります。りんごの木と一緒にするつもりはありません。私は本書でインフルエンザウイルスが人に「害をなさない工夫」の仕方を具体的に提案しました。

ワクチンとタミフルなどの新薬で、インフルエンザウイルスと徹底的に闘うことが最善と考えている医療のあり方を、国民の皆さんが見直すきっかけにしていただければ幸いと思っています。木村さんのご苦労の一端を表す言葉が載っています。「何で歯がないんですかって人に聞かれると、私はりんごのと、自分のを引き換えにしたんですと」。

 

B闘う医療の代表格が「がん」−がんとの闘いに見る空しさ→転移論の誤りの結末

今日、医学が目覚しい進歩を遂げていると言われながら、ガンの死亡率が増え続けているという奇妙な現象があります。これは一体どういうことなのでしょうか。ひとたびガンと診断されると、患者はうろたえてしまいます。「このまま何もしないで放置すると、遠からず、命を落としますよ」と医者から脅されるからですよね。早速ガンの3大療法といわれる手術、抗がん剤、放射線治療がベルトコンベアーのごとく待ち受けています。たいていの人は藁にもすがる気持ちでそれに乗せられていきます。その結果が、ガンの死亡率の上昇というのですから世の中どうなっているんでしょうかね。拙著『抗がん剤は転移促進剤』(農文協)において、がん細胞との徹底抗戦がこういう事態を引き起こしていることを詳述しました。世界各地で起きている血で血を洗う民族紛争と相通じるものがあります。

『患者よ、ガンと闘うな!』(文芸春秋社)を著した慶応大学の近藤誠氏は最近、『日刊現代』紙上で『やっぱりガンと闘うな!』という連載を行いました。抗がん剤治療によるガンとの闘いのむなしさが綴られています。近藤氏はそこで、がんと徹底的に闘う今日のガン医療を的確に批判しています。また同氏が以前発表した「検診が病を作る」理論には大いに感銘を受けました。今日の過剰検査、過剰治療の現実が、かえって病気と医療費の増大を招いていることを20年前にすでに予言していたのです。ただ残念なのは、同氏には安保徹氏が発見した「白血球の自律神経支配の法則」に基づく免疫論が見られないことです。がんと闘うリンパ球を増やすための手立てが述べられていません。したがって、拙著『抗がん剤は転移促進剤』で指摘したように、がんの転移がリンパ球の免疫力の低下に連動して起こることを見落としてしまうのです。その結果、分子レベルの遺伝子のやり取りによって転移が起きるという迷路にはまり込んでしまっているのです。これではがん転移の真実は迷宮入りとなります。簡潔に言い表すと、交感神経の過剰緊張状態の連続の下で、リンパ球のパーセンテージが極端に低下した体内環境が生まれます。これはリンパ球が活躍する術を失った状況といってよく、がん細胞にとって天敵不在に等しくなります。

 

C間違った転移論(A)と正しい転移論(B)の違いとは何か

 上記のことを簡潔にまとめると次のようになります。前者をA、後者をBとします。Aは有名な科学雑誌「ニュートン」に掲載されたものです。国立がん研究センターの理事長ら現在の一流といわれているがんの臨床医が執筆しています。Bは臼田が、大学院の研究論文に基づいて、『抗がん剤は転移促進剤』(農文協)で発表したものです。

の基本的な考え方は次のようになります。まず、がんが内臓の粘膜に発生します。がんは上皮細胞で発生するからです。がんが大きくなるにつれ固有筋層に侵入し、転移力を持つようになると言います。そこで血管やリンパ管の壁を破り、管に侵入し、遠くは慣れた臓器の血管に到達し、そこの血管壁を破ってその臓器に入り込み、その新天地で増え続け新たな腫瘍を形成するのが“転移”と見ています。一見したところ、もっともらしく考察されています。この論理の最大の弱点は、リンパ球を主体とするがん細胞に対する免疫論が語られていないことです。これでは、抗がん剤などによって、免疫力低下が起きることが軽視される結果となります。よって、がんによる死亡率を減少させることは出来ません。

は臼田によるものです。転移を形成するための三つの要因をまず挙げます。

@リンパ球免疫力の低下し顆粒球が過剰に増えた状況が体内を支配すること。

Aそういう状況のなかで、がん細胞自体がキラーT細胞などのリンパ球の攻撃を受けにくくなり、増殖が旺盛となり、さらに個々のがん細胞の自立性が高められます。これが転移力を獲得したがん細胞とみられます。「株化類似現象」と名付けました。実際のがん細胞の培養から得られた結論です。

Bストレスなどにより、交感神経過剰緊張が起きると、毛細血管の収縮傾向が高まります。さらに、赤血球は弾力性を失い、互いにべたべたとくっついて、繋がる現象がおきます。これを赤血球の連銭現象と言います。転移成立の場所が整えられたことになります。

 以上の3条件が、臼田が唱える転移成立の条件です。このような条件を阻止するためには、自律神経を副交感神経優位に導く「自律神経免疫療法」や最近特に話題を集めている丸山ワクチンやBCGCWS療法などによる「樹状細胞活性化療法」を、がんの予防と治療に導入することが必要です。

Dがんと闘わないとは、自然の免疫力を高めること

上記したように、自然の体に備わった免疫力を高める対策が、がんと闘わないで、がんの発生や増殖、転移を抑える正しい道であることが分かると思います。そのキーワードが「樹状細胞活性化」ということです。これを促す働きをするBCGCWSと前回述べた丸山ワクチンとの密接性については次回に詳述します。

 

Eインフルエンザと闘わない道を選ぼう―インフルエンザに軽くかかって免疫を鍛えるー

☆朝引いていなければ昼間は引かないーインフルエンザは夜中に進む

この基本原理を置き去りにしたままインフルへの対策が行われているため、いろいろな歪が随所に現れています。はっきり言うと、私の研究によって、インフルウイルスに対する免疫力が、昼夜で著しく異なっていることが明確に証明されたのです。つまり、体の側の昼夜の著しい変化にお構いなしに新薬とワクチンの投与ばかりが行われているのが現状の医療の実態です。体の状況変化がまったくと言っていいくらい生かされていない。したがって、時間的、経済的損失ばかりか、体に甚大なダメージを与える副作用事故が後を絶ちません。ひたすら病原体ウイルスのみを標的とする医学、医療が跋扈することになるわけです。人体で猛烈なスピードで遺伝子変異するウイルスとの「いたちごっこ」が果てしなく続くことになるのです。

 朝起きてのどに異変がなければ、おおむねその日の予定行動は滞りなく遂行されます。目覚めた後に起こる交感神経への急速な切り替えによって起きる現象です。交感神経はアドレナリンの分泌を一斉に高めます。その結果、リンパ球の反応が押さえ込まれ、上気道の扁桃腺組織の炎症や全身の発熱を低く抑えてしまうのです。昼間インフルウイルスを外からもらってきても、睡眠中の適切な対応によってインフルの症状を軽く済ませてしまう秘訣がここにあるのです。朝軽い症状ならば、昼間の活発な行動によってリンパ球の過剰な働きを抑え、症状を打ち消すことができます。これは理想的なインフル対応策であり、不顕性感染へ自ら導く手立てとして有効です。仕事をこなせる上に免疫もいただけるまさに一石二鳥の成果です。最重要項目なので重複しますが、ワクチンの免疫は、HI抗体だけ、しかも変異した一つのステージのものだけです。自然感染は、HIのみならずNAの抗体もできますし、体の中にはいってから出るまでに変化するウイルス抗原全てに対して免疫ができます。最も確実なインフルエンザ予防法となることがお分かりいただけたと思います。

「風邪、インフルにおける昼夜の免疫力の差」を取り上げる人はまずいません。

「風邪を引いたら寝ていれば自然に治る」では日常活動を休めない人への説得力に欠けます。理想論ばかり唱えていても国民のニーズにきちんと応えなければ役に立ちません。

☆何事も初期消火が肝心

 火事をボヤのうちに消し止められるか、または、それができずに燃え広がってしまうのか。火事は初動が最も重要なことは言うまでもありません。インフルにもそれがピッタリ当てはまるのです。インフルエンザはウイルスの侵入場所が発症の場所です。しかもそこは上気道であって、自らの予防手段が届きやすい場所です。火事に例えると、すぐにバケツで水をぶっ掛けて消し止めやすい所なのです。インフルは初期消火がやり易い疾患であるにもかかわらず、今日のインフル予防学では、自然治癒対策は「うがい、手洗い・・・」を見ればわかるように、これらは日常の生活習慣に過ぎないのです。

☆初期消火の4本柱

@睡眠中のぬれマスクによる吸気加湿と口呼吸の防止

A交感神経の働きを適度に高めること

B上気道の運動と血流を高め局所の免疫力をアップする

 睡眠中は呼吸は自動的に行われますが、物を飲み込む嚥下運動は停止したままです。この運動休止が、上気道でのインフルウイルスの繁殖をサポートしています。嚥下によってのどが動いていると、代謝が活発になり体の働きによって、ウイルスがかなり撃退されるからです。同時にリンパ球の過剰防衛が緩和される仕組みなのです。

C市販の風邪薬で初期消火のダメ押し―ただし、緊急避難的対応

 インフルは急速に進行します。「風邪かな、と思ったら48時間以内に病院にかかって検査を受ける。インフルとわかったらすぐタミフルを飲む」といったのんびりしたことを言っておれません。翌日病院にかかるまでに、夜中にウイルスの大増殖が起きるからです。おかしいと思ったらすぐに買い置きしてある風邪薬を飲むことが効果を発揮します。これまで何度も飲んできた風邪薬ですから副作用の心配もなく安心して飲めるのです。上述の塩酸メチルエフェドリンによって交感神経の働きが少し高められ、リンパ球の過剰な働きが押さえ込まれます。

☆追加として、「ひたいを適度に冷やす」のも効果的

上記4本柱を補足する手立ても考えておく方が、薬をなるべく用いない自然治癒対策の一環として役に立ちます。ただし、水風呂などに入るのはいただけません。アメリカなどで行われていますが、こんな過酷なことをやっていると、悪寒、戦慄を起こしやすく、組織障害性のサイトカインが分泌されやすくなるのです。気分の良い冷やし方が重要です。

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