薬害肝炎再発防止パブリックコメントに応えて意見を提出

 

 厚生労働省医薬品局は、C型肝炎感染事件(薬害肝炎事件)の発生及び被害拡大の経過及び原因等の実態について、多方面からの検証を行い、それを踏まえて、再発防止のための医薬品行政の見直し等について提言することを目的として、2008年5月、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」を設置しました。

 同委員会は、20096月、「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(第一次提言)」を取りまとめ、それについてのパブリックコメントの募集を行いました。

 当センターでは、これに応えて、2010128日にインターネットを通じて意見を提出しました。以下はその意見の全文です。


薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(第一次提言)に関する意見


バイオハザード予防市民センター

2010118

 

 昨年430日に薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会が発表した「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(第一次提言)」(以下、提言)に関して、国家検定のあり方に対する考察が不十分であるので、その点に絞ってバイオハザード予防市民センターの考えを述べたい。

 2章の「薬害肝炎事件の経過から抽出される問題点」において、フィブリノゲン製剤の承認経過が述べられているが、「厚生省が…承認を与えた」という記述が多々見受けられる。この表現は間違いではないが、権限が多岐にわたる厚生省とすることで抽象的になり、具体性が乏しい。薬害再発防止には、出来るだけ具体性を持って臨まなければならない。フィブリノゲン製剤などの生物学的製剤の国家検定・検査業務と品質管理に関する研究を行っている国家機関は国立感染症研究所である。1977年にFDAが承認取消しを行った際、1979年に国立予防衛生研究所(予研、現在の国立感染症研究所)血液製剤部長・安田純一氏が、自著「血液製剤」にこの取消情報を記述していたが、国家検定には生かされなかった。

 国立感染症研究所(感染研)の国家検定においては、厚生省により決められた検査項目を決められた手順に従って行うものであって、実施者が勝手に項目を省略したり、付け加えたり方法を変えてはならないとされ、薬害肝炎(あるいは薬害エイズ)において国立感染症研究所には責任がないという考え方もある。しかしながら、国立感染症研究所に期待される業務としては、世界的な最新情報の収集・分析・研究が含まれるのであり、そこで知りえた知見は国民の健康と安全に寄与するものでなければならない。2002年に厚生労働省が公表した「フィブリノゲン製剤によるC型肝炎ウイルス感染に関する調査報告書」によれば、1982年の旧予研の生物学的製剤検定協議会において米国におけるフィブリノゲン製剤の承認取消しに関して、上記安田氏の発言があった旨が記されているが、厚生省に連絡したかどうかは不明となっている。厚生省本省がこうした危険性を察知する情報収集が不十分であった点は否めないが、現実に国家検定を行う機関として旧予研はいち早く危険性を指摘し、国家検定に生かす方策を講ずるべきであったと言わざるを得ない。

 提言第2章Eにおいて、1987年に発生した青森県における集団感染について述べられている中で「厚生省において自ら原因究明を行うのではなく事実確認を製薬企業に求めるのみの対応」「厚生省は、旧ミドリ十字社に対し、調査報告、非加熱製剤の自主回収、加熱製剤の承認申請の検討等を指導したにとどまった。」とある。ここでも、国家検定機関である旧予研(現、感染研)の役割が不明確である。医療機関から厚生省本省に届いた情報を予研にフィードバックしていれば、国家検定のあり方、検査項目の変更等が可能であったかもしれない。

 こうした構造は第\因子製剤に関しても同様である。1983年時点でエイズ感染の危険性を指摘せず、1985年に加熱製剤に切り替えられて以後も、非加熱製剤は自主回収が行われなかった。国家検定機関であるはずの旧予研(現、感染研)は何の役割も果たすことが出来なかった。

 提言第4章以後、薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しに関して数々の提言がなされている。(1)の基本的な考え方の中で「まず、強調されるべきことは、医薬品行政(国、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)、地方自治体)に携わる者の本来の使命は国民の生命と健康を守ることであり、命の尊さを心に刻み、高い倫理観を持って、医薬品の安全性と有効性の確保に全力を尽くすとともに不確実なリスク等に対する予防原則に立脚した迅速な意思決定が欠かせないことを改めて認識する必要がある。」とある。基本的な考え方としては妥当だと言える。特に「予防原則」を明記したことは重要である。しかしながら、問題はどこまで具体性を持って実行できるかである。

現在、生物製剤の国家検定を担っているのは国立感染症研究所の血液・安全性研究部である。同研究所はWHOとの連携にみられるように、常に国際的視野に立って、最新の知見を収集・分析・研究することが求められる。厚生労働省の一機関ではあるが、その研究活動には一定の独立性が求められる。検定業務においても、製薬企業などとの癒着が生じないよう努めなければならない。1983年には国立予防衛生研究所の職員が、抗生物質の検定成績通知書に虚偽の記載を行った「抗生物質不正検定事件」や製薬会社から提出された新薬製造承認申請資料の窃取事件にも加担し逮捕された「新薬スパイ事件」が起きたことを忘れてはならない。また、独立性は厚生労働省本省に対しても求められる。しかしながら、その独立性は無前提に担保されるものではありえず、国民の生命と健康を守ることを第一義としなければならない。この観点から、国内外問わず、薬害の危険を迅速に把握し速やかに国家検定に反映させる仕組みを構築することが求められる。その際に予防原則を徹底することが求められる。薬害再発防止を実現するために、行政組織の在り方が検討されているが、どのような組織が出来ようとも、国立感染症研究所は予防原則に則って断固薬害の危険性を提言出来なければならないし、そうした提言を速やかに反映させる組織機構を考えなければならない。そのためには、国立感染症研究所内においても、自由闊達な議論ができる組織作りを心掛けなければならない。また、国家検定のあり方も再考しなければならないのは言うまでもない。

                                                                              以上