市民との協定より、「研究成果をあげることに全力を尽くしたい」

〜住民質問に研究所側回答〜

高橋龍郎

 去る6月25日に慶応義塾先端生命科学研究所の実験実習センターで、対話の場を持ちました。ただし設定したのが慶応研究所支援の立場の人だったために予め提出していた質問書を中心とした質疑応答という形にならず、市民のすべてが「歓迎 慶応技術研究所」ではなく、バイオ研究所に対してその安全性に懸念を持っている人たちも居るということを研究所長の富田 勝氏をはじめとする研究所幹部の人たちに伝えるにとどまったという感じでした。そして質問書に対する回答は次の日にメールで送られてきました。

質問回答については以下に箇条書きにしました。

質問1 文部省(現文部科学省)が定めた「大学における組換えDNA実験指針」に則った「安全管理規程」を定めていますか? また、その内容について公表されていますか?
回答 定めています。詳しくは先日お渡しした安全規程を参照してください。

質問2 「実験安全委員会」等を設置していますか?
回答 設置しています。先日お渡しした安全規程を参照してください。

質問3 「実験安全委員会」等には、研究所関係者以外の市民も入っていますか? また入れる予定はありますか?
回答 どこの研究所でも通常は関係者だけで構成します。実験を開始する前に速やかな決断が下せるようにするためです。つねに情報開示の用意はあります。
補足 委員長は所長の富田氏、以下大学内部の者(事務方も含む)で構成。
追加質問 どこまでの情報開示でしょうか? 限界はありますか? 例えば、実験実施規程の第14条にある関係各省庁への報告書類は開示できますか?
 また、「化学薬品類廃棄管理規程」にある「マニフェスト」は開示できますか?
回答 DNA組換え安全管理委員会の擬似事項についてはお答えできます。省庁への提出書類は、省庁側の公開規定に依存します。基本的に、我々の実験はすべて機関届出の実験なので省庁への届出はありません。条文はいろいろなケースをカバーするように書いています。マニフェストはファイルに閉じる予定であり、問題なく開示できます。
補足 一方で、私達は他の研究所と健全な競合関係にあり、実験内容をすべて公開してしまう事にはためらいがあることにもご理解ください。

質問4 P2レベルの実験室と聞いていますが、今後P2以上のレベルに上げていく計画はありますか?
回答 P3、P4レベルにする計画はありません。

質問5 供与体、宿主、ベクター、マーカーとして、どのような生物試料を取り扱いますか? 使う予定のものも含めて、具体的に教えてください。
回答 供与体:非病原性微生物など。宿主:大腸菌、枯草菌。ベクター:プラスミド。マーカー:アンピシリンなどの抗生物質。
補足 病原性のものは使わない。

質問6 放射性物質や重金属は取り扱いますか? 使う予定のものも含めて、具体的に教えてください。
回答 微量のMn(すべて業者が回収)

質問7 廃水・廃棄物については、業者委託で処理を行うと聞いていますが、どこのなんという業者ですか? その業者はこのような廃水・廃棄物の処理経験がありますか? また、研究所内での廃水・廃棄物に関する責任はどなたですか?
回答 オイルケミカルサービス苅山形大学農学部での廃液処理実績あり。

質問8 廃水・廃棄物はどのように保管され、どのようにチェックされますか?
回答 先日お渡しした「化学薬品類廃棄管理規程」参照。廃液・廃棄物の管理等は所長が責任者となって統括。管理者は、廃液タンクの日常点検を行う。廃液処理は外部業者委託。

質問9 遺伝子操作による変化でしょい自他最近の病原性の有無は、どのようにチェックしますか? 排気前にそのチェックを行いますか?
回答 すべての細菌は廃棄前に接し120度20分で滅菌処理します。

質問10 排気装置はどの場所に位置し、どちらの方向を向いていますか? 排気装置のHEPAフィルターはどの程度の精度ですか?
回答 ドラフトチャンバー DF−11AK(ダルトン製)

 この回答で私が問題点と考えた部分を上げてみます。
  1.  安全委員会に外部の人を入れない理由です。自分達のやることに間違いがあるはずが無いという安全神話の押し付けと、自信=傲慢さが感じられます。
  2.  企業秘密もあるということで研究内容を全面公開できないことを理解して欲しいということであるが、公開できないものにこそ危険性の高い研究が多いことは今までの経験から言うことができます。
  3.  マーカーにアンシピリンなどの抗生物質と回答しているが、マーカーが抗生物質ということは無いので、外部の人に知られたくないウィルスと考えられる(再度確認する予定)。
  4.  安全協定について先輩格の山形大学農学部と結ぶのが先と言っているが、農学部にはP1の研究室しかなくP2研究室としては慶応研究所が当市にとって最初であり、農学部につては将来の計画であり、話の筋が逆である。
  5.  会合の中で、遺伝子組換え研究によって新しい微生物などを作る計画はありますか、と質問したが、そのような計画は全くないという回答だったにも関わらず、ベクターやマーカー、供与体、宿主等に回答しており、企業秘密もあるといっていることから回答について信用しなさいと言われても無理なことと考える。
  6.  今回の会合に参加したのは、特定の目的を持っていないサークルに私が話を持ち込んで、メンバーの中で関心のあった人たちが言わば個人的な立場で参加したという形なので、今後引き続き研究所や行政側と納得のできる安全性確保のための交渉を続けるためには別組織を立ち上げる必要があると考えているが、見通しについて私自身はかなり悲観的に感じている。 
 
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